2015年12月27日日曜日

ドメーヌ・ルフレーヴの醸造家が書いた、ビオディナミ・ワインの入門書

今年もあと少し。
週明けからはお休みに入られる方も多いかと思いますが
本日は、休暇中の読書におすすめの本をご紹介します。





















ビオディナミ・ワイン 35のQ&A
/ アントワーヌ・ルプティ・ド・ラ・ビーニュ 著
星埜聡美 訳 
立花峰夫 解説  
定価(本体2,200円+税) 白水社

「ビオディナミ」という言葉は何となく知っているけど
実は詳しいところはよくわからない。
そんな方が多いのではないでしょうか。

中小規模の一部の生産者が取り組むものと
目されることが多かったビオディナミですが、
最近になって、ボルドーの格付け第1級シャトーのシャトー・ラトゥールが
近々ビオディナミ認証を目指していると発表。
シャトー・マルゴーも一部区画でビオディナミを実験中で
同じくマルゴーの3級、シャトー・パルメも、
2008年からビオディナミに取り組んでいるというニュースが話題になりました。
(5級のシャトー・ポンテ・カネは2010年に取得済み。)

また、シャンパーニュの大手、ルイ・ロデレールも
プレスティージュ・キュヴェのクリスタルについては、
3年後には全てビオディナミ栽培となると公表。

ボルドーの1級シャトーや大手シャンパーニュメゾンが取り組み始めたことで、
今後はさらに注目を集めそうです。


















現在クリスタルに使われるピノ・ノワールは100%ビオディナミ。
シャルドネについては、3年後には全てビオディナミになるそうです。

さて、そんなビオディナミについて書かれた本書。
著書は、ブルゴーニュ最高峰の白ワイン生産者、ドメーヌ・ルフレーヴの醸造家である
アントワーヌ・ルプティ・ド・ラ・ヴィーニュ氏。
パリの理工科大学校を卒業後「ワインへの熱狂的な思いから」ワイン造りに進み、
農業学、醸造学を修めたという方です。

本書には、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティの現当主、
オベール・ド・ヴィレーヌが「刊行によせて」という序文を書いています。
オベール氏が、

「アントワーヌ・ルプティ・ド・ラ・ビーニュほど、
ビオディナミの入門書を書くのに適した人はいません。~中略~
アントワーヌはワインに関係するさまざまな科学的知識を学んでいます。
この点では、ブドウやワインを学問的に研究する科学者にも引けを取りません。」

と語るように、豊富な知識を持つ著書だからこそ
ともすれば思想的、哲学的な部分が難解と思われがちなビオディナミの説明を、
ロジカルに、わかりやすく説明することに腐心していることが伺えます。

本書は、タイトルにあるように35のQ&Aから構成されており、

「ビオディナミ・ワインはおいしいのでしょうか?」
「ビオ(有機農法)とビオディナミはどこが違うのでしょうか?」
「ビオディナミ・ワインは身体に良いって本当?」

といった素朴な質問から始まって、
徐々にビオディナミの核心に迫っていきます。

巻末にある、立花氏による解説も非常に興味深く、

「肯定派の人には理論武装の糧となるし、
否定派の人には、敵の言説の穴を探すための見取り図になるだろう。
どんな立場の人にとっても、これは必読の書なのである。」

との言葉に納得。

来年以降も、ワイン界の大きな潮流になるに違いない「ビオディナミ」。
まずはこの入門書を読んで、その理解を深めておきませんか。

2015年12月15日火曜日

シャトー・ラトゥールより、フレデリック・アンジェラ社長が来日!

メドックの格付第1級、シャトー・ラトゥールより、
オーナー・ファミリーのフローレンス・ロジェールさんと、
社長のフレデリック・アンジェラさんが来日。
それに合わせて開催したシャトー・ラトゥール・マスタークラスは、
プロフェッショナルの方を中心に70名のお客様で賑わいました。

















↑社長のフレデリック・アンジェラさんと
 オーナー・ファミリーのフローレンス・ロジェールさん。

ラトゥールの成功の秘訣は、まずは何と言ってもテロワール。

 「ブルゴーニュでは、区画やアペラシオンごとにキャラクターが分かれています。
  ボルドーでは一つのシャトーが管理する畑の面積が広いため、
  そうした認識があまりありませんが、
  シャトー・ラトゥールでは、ブルゴーニュのように区画ごとに管理しています。
  畑ごとの区別化、理解が大切なのです」

とアンジェラさん。

特にシャトー・ラトゥールの畑で特徴的なのが、
ジロンド河にほど近い、47haの“ランクロ”と呼ばれる歴史的な畑。

 「ランクロは素晴らしいキャパシティがある畑で、
  いろんな気象条件に耐え得る力を持っており、
  この畑のブドウがグラン・ヴァンにブレンドされます。
  (一部はレ・フォール・ド・ラトゥールに使用)」

2007年からは、ランクロでは9頭の馬を飼い、
馬が畑を耕しているそうです。

シャトー・ラトゥールが手がけるのは、
シャトー・ラトゥール、セカンドのレ・フォール・ド・ラトゥール、
サードのポイヤック・ド・ラトゥールという3種類のワイン。
同じチームがこれらのワインを手がけています。






















ちなみにラトゥールでは、飲み頃のヴィンテージをリリースしたいと考えており、
2012年ヴィンテージからプリムール販売を行っていません。

“飲み頃”へのこだわりは、
グラン・ヴァンのみならず、ポイヤック・ド・ラトゥールについても同様。

ポイヤック・ド・ラトゥールは、今年2011年をリリース。
その前の2010年ヴィンテージは、まだまだ若いと判断し、
再来年の2017年にリリース予定だとか。
シャトー・ラトゥールでは、サードワインですら、
7年間も熟成させて飲み頃を届けたい、との想いがあるのです。






















最後の質疑応答で、
100年の歴史を誇る寿司屋の4代目ご主人の方から、
「モットーにしていることを教えてください」との質問が。

アンジェラさんは、

 「チャレンジを恐れないこと。
  ラトゥールのパーソナリティを考えつつ、
  革新を恐れず、今だからできることをやりたい。
  昔に遡るべきことと、今だからできることをミックスすることが大切です。」

と力強い口調で即答していただきました。
シャトー・ラトゥールでは来年にはビオ認証取得を検討しているとのことで、
これはメドック特級格付1級シャトーでは初の試み!
ただし、ランクロのみならずラトゥール全体で取得する必要があり、
大変難関ですが、挑戦中だそうです。

アンジェラさんは社長に就任した1998年の直後の
1999年から2003年までシャトーに大規模な設備工事を行い、
醸造蔵、熟成庫、ストックスペースの全改築を実施。
もともと偉大なテロワールを有しながらも細部にこだわり、
「さらに上を目指したい」と、様々な先鋭的な改革を行っています。

圧倒的な存在感を放つシャトー・ラトゥールの味わいの源泉が感じられるような、
熱い熱いひとときとなりました。

▼来日に合わせた蔵出しバックヴィンテージも続々入荷。
 シャトー・ラトゥールの特集はこちら▼
http://www.enoteca.co.jp/item/list?_label=LAT

2015年12月10日木曜日

チリワインのパイオニア、モンテス社来日!

先日、チリのモンテス社より、
輸出部長のエドアルド・スターク氏が来日。
モンテス社の新しい取り組みなどについて、インタビューを行いました。





















実は今年は、日本におけるチリワインの輸入量が、
長年不動の首位を守っていたフランスを抜いて1位になりそうという
ニュースが話題になっています。
チリワインの大躍進について聞いてみたところ、

「チリワインのスタイルは、
 旧世界のワインと、新世界の中でもオーストラリアワインの中間。
 旧世界にはないフルーティーさがありながら、オーストラリアほどへヴィではない、
 果実のおいしさを前面に出したスタイルが、世界で支持されていると思います。」

先日行われたデキャンタ・ワインアワード※特集はこちら でも
審査では「よりエレガントでブドウの果実味を素直に表現したワイン」が
最近のトレンドになっているというお話がありました。
モンテスでもそういったトレンドを意識するようになったのでしょうか?

「もちろん。最近では木樽の使用は最小限にして、
 ブドウの Purity=純粋さ を生かした造りにシフトしている。
 女性と同じ。元がいいブドウは、厚化粧しないほうがいいでしょう?

 日本のお客様で20年来モンテスのワインを愛用してくれている方から
 最近のモンテスのワインはエレガントになってきた、
 とお褒めの言葉を頂いたんですよ。」

とエドアルドさん。
















最近何かと話題になっている地球温暖化について尋ねると、
モンテスでは、「ドライファーミング」という方法に
取り組んでいるとの答えが返ってきました。

チリでは、地球温暖化によってアンデス山脈の氷が溶け、
年々降雨量が減少しているそうです。
毎日アンデス山脈を観察していたアウレリオ・モンテス氏は
そのことにいち早く気づき、水が少ない環境でブドウがどのように育つのか、
調査と実験を行うことにしました。

灌漑設備を使って、70%、50%、20%、0% と、
畑に水を与える量を変えて実験したところ、驚くべき結果となりました。
0%の区画については、初年度は全く実を付けませんでした。
ところが、2年目以降は、小さいながらも
凝縮した風味をもつブドウの房が実るようになり、
この灌漑0%のブドウが最も高い品質のワインを生み出すことがわかったのです。
もちろん、ブドウの樹が死んでしまわないように最低限の水は与えるそうです。

この0%の灌漑によって、ブドウの樹は水が少ない状態に適応し、
根をしっかりと地中に張って強くなる。
水を与えるのではなく、
水がなくても生きていける強いブドウを育てるという発想です。




















↑左がドライファーミングのブドウ。造られるワインの量は通常の約半分。

このドライファーミングを本格的に導入したのが2012年ヴィンテージ。
ブドウの房の大きさは通常の半分のため、皮の比率が高く
それによって十分エキス分が抽出でき、ルモンタージュの必要がなくなり
ワインの味わいはよりエレガントになったそうです。

また、ドライファーミングによって、
それまで灌漑に使用していた水の60%を削減。
チリで2万人の人々が使用する量を節水することに成功したそうです。
このドライファーミングの導入について、チリでは
ドライファーミングは、雨の多いフランスでやるもの。
チリでやるなんて信じられない!と言う反応が大半だったとか。
いいブドウは獲れるけれど、収量は約半分になるため
導入しているワイナリーはほとんどありません。

サスティナビリティ(持続可能な農業)を目指しているモンテスにとって
高品質なワインを造りながら、大切な資源である水を守ることはとても重要なこと。

さすが、チリワイン界のパイオニアであり
今も最先端を走り続けるワイナリーならでは。
創業して20数年という比較的歴史の浅いモンテス社ですが、
着々と次世代への取り組みは進んでいるようです。

2015年12月3日木曜日

未来を見据えるイタリアワインの帝王「ガヤ」より、ガヤ・ガヤさんが来日!

イタリアのソムリエのバイブルと言われる
イタリアワイン専門誌「ガンベロ・ロッソ」。
そのなかでトレ・ビッキエリ(最高賞)獲得数がナンバーワン、
文字どおりイタリア最高峰のワイナリーが「ガヤ」です。

先日、ワイナリーから4代目当主アンジェロ・ガヤ氏の長女、ガヤ・ガヤさんが来日。
プロフェッショナルセミナーで、
ガヤの歴史について、ワイン造りについて詳しくお話いただきました。
















↑左から、ガヤさんの弟、ジョバンニさん、
 通訳を担当されたワインジャーナリストの宮嶋勲さん、ガヤ・ガヤさん。

セミナーの中でも特に印象的だったのが、
現在パリで開催中のCOP21でも話題になっている温暖化について。

「ワインを造っていると、気候の変化に敏感になります。」

とガヤ・ガヤさん。
明らかに、気候が変わってきたことに気付くそうです。

 「昔のように冬が寒くならず、そのため害虫も死にません。
 温暖化と共に病害も出てきました。」

その他、収穫時期が早くなる、ブドウの糖度が上がる、などの変化もあるとのこと。
そこでガヤは、温暖化に対して様々な対策をとっています。

 「まずは初めに取り組んだのは、たい肥を変えること。
 イキイキとした土壌を保つため、自分たちでたい肥を作るようにしました。」

そして2つめに行ったのは、外部コンサルタントを初めて雇ったこと。
それまでガヤではコンサルタントを雇っていませんでしたが、
2000年から取り入れるようになりました。

「醸造や栽培のコンサルタントではなくて“植物学者”です。
ブドウの樹からいろんなことを読み取ることを教えてもらっています。」
















↑植物学者が、ブドウの生育や病害虫への対策をアドバイス。

そして3つめに実践したことは、
ランゲ地方固有の雑草を選んでガヤの畑に植えたこと。

「ブドウの何畝かを犠牲にしても、植物を植えるようにしました。
環境にいちばん敏感と言われるミツバチの巣箱も置き、
ブドウ畑のみならず、周囲の環境も含めて注意を払うようにしています。」
















こうした取り組みによってワインが美味しくなるとは限らない、とガヤ・ガヤさん。


 「我々には長期的なビジョンが必要です。
 もっと広い視野でのワイン造りをしなければなりません。
 そして、確実に成果は出てきていると思います。」


 「映画にもなった小説『山猫』にある、
 “すべてが今のままであろうとするなら、すべてを変えなければダメだ”
 というセリフのとおりです。
 いろいろと自分たちで試しながら、前に進んでいきます!」


未来を見据えて、ブドウ畑の環境作りに取り組んでいるガヤ。
父アンジェロさんを彷彿とさせる、
ガヤ・ガヤさんの力強い言葉が印象的でした。

現在は、ガヤさんの妹、ロッサーナさんもワイン造りに参画。
今回一緒に来日した弟のジョヴァンニさんは大学を卒業したばかりですが
大学院進学の後、ワイン造りに参加するそうです。

帝王の座に甘んじることなく、先鋭的な取り組みを行っているガヤ。
ガヤさんたち新世代の活躍から目が離せません!

2015年11月21日土曜日

アルゼンチンで独自のワインづくりを続ける若き情熱家

イタリアワイン好きなら知らぬ人はいない憧れの銘柄、サッシカイア。
イタリアでボルドー品種を育てて成功し
スーパータスカンブームを巻き起こした伝説の銘柄です。

実はそのサッシカイアのファミリーが
アルゼンチンでピノ・ノワールを造っているのをご存知でしょうか。

先日、そのワイナリー、ボデガ・チャクラより
オーナーのピエロ・インチーザ・ロケッタ氏が来日しました。

 


ピエロ氏は、イタリア、サッシカイアの創始者兼オーナーである
マルケーゼ・マリオ・インチーザ・ロケッタの孫にあたる人物。
幼少期をイタリア・トスカーナのマレンマにあるワイナリーで過ごしました。

スイスの名門校を卒業した後は、
銀行での短期間の勤務を経て、カリフォルニアで経済学を修め、
その後2003年にはニューヨーク大学で修士号を取得します。
幼いころから「ワイン生産者になる。」という夢があったというピエロ氏が
ニューヨークで行われたワインスペクテーターの試飲会で運命的に出会ったのが、
アルゼンチン・パタゴニア産のピノ・ノワールでした。

その試飲会場では、無数のピノ・ノワールが出品されており
ブラインドでテイスティングを行っていたそうですが
その時に飲んだパタゴニアのピノ・ノワールに衝撃を受け、
「このワインを造りたい!」と思ったそうです。

早速実行に移し、パタゴニアにある土地を購入し
ボデガ・チャクラを創設したのが2004年。
そこは、1932年に植樹された古樹のピノ・ノワールがある
大変ユニークな土地でした。















↑馬で耕される畑

チャクラがあパタゴニアのリオ・ネグロは
アンデス山脈と大西洋の中間あたりに位置。
非常に乾燥した気候が特徴で、四季がはっきりしています。
ピエロ氏は、世界に通用するピノ・ノワールを造るために、
有機農法とビオディナミを実施。

限りなく自然な醸造を行うことで、
現在では稀有な存在である、
接ぎ木を行っていない自根のピノ・ノワールならではの
ピュアで複雑性のある繊細な味わいを生かしたワイン造りを行っています。















↑近代的なワイナリー。グラヴィディティシステムを採用。

実はピエロ氏は、ブルゴーニュワインの熱狂的な愛好家。
好きな造り手は、ルソー、ルーミエ、デュジュックらだそう。
毎年ブルゴーニュに行って、生産者との交流を通じて
ワインを研究しているそうです。

チャクラのワイン造りに関しては、
「リオ・ネグロならではのテロワールを表現したい。」
と熱く語ってくださったのが印象的でした。


1年の1/3はアルゼンチン、1/3はニューヨーク、1/3はイタリアで過ごすというピエロ氏。
今後イタリアなど、他の土地でワインを造る予定は?との質問に

「No!!!」(←強く)
「I have to focus one thing!」
(私は一つのことに注力するべきなんだ!)

ときっぱりと否定されてしまいました。

自分は農家であり(とても農家には見えないほど洗練されていますが・・)
リオ・ネグロのテロワールを表現すること
ピュアな表現をし続けることに注力していきたい、とのことです。

イタリアでカベルネ主体のサッシカイアを造るファミリーとは
全くの別天地でピノ・ノワールを造り続けるピエロ氏。
今後の活躍がますます楽しみです♪





2015年11月5日木曜日

シャンパーニュ ルイ・ロデレールより副社長ミッシェル・ジャノー氏が来日!

先日、シャンパーニュメゾン、ルイ・ロデレールより
副社長のミッシェル・ジャノー氏が来日。
ショップでのイベントに加え、スタッフ向けのセミナーが行われました。




















↑いつもダンディなミッシェル・ジャノー氏。

ジャノー氏は、パリ大学で法律と経済の博士号を取得、
法律の助教授としてキャリアを始め、
その後、父親の経営するジャノー・アルマニャックの輸出部長として参画。
また、シーグラム社に買収されるまでコニャック大手のマーテルで会長を務め、
1999年よりルイ・ロデレール社に参画。
2001年からは副社長として渉外・広報を担当する。
2008年、レジオン・ドヌール勲章(シュヴァリエ)を受章。

とつらつらと書くととても華々しい経歴!
現在は特にマーケティングを中心に担当されているそうです。

ルイ・ロデレールのシャンパーニュ4種を試飲しながらお話を伺いました。
















ルイ・ロデレールは18世紀に創業し、
来年でちょうど240周年を迎えるという老舗メゾンで、
その間、ずっと家族経営を守り続けている稀有な造り手でもあります。

今回試飲した中でも特に印象的だったワインをご紹介します。
まずはこちらのブリュット・ヴィンテージ・ロゼ 2010年。


















ブリュット・ヴィンテージ・ロゼ 2010年 / ルイ・ロデレール
10,000円(10,800円 税込)

こちらのロゼの特徴は何と言っても
その淡く美しいサーモンピンク色の色合いと、
華やかだけでなく繊細かつ芳醇な香りにあります。
その独特の風味を生み出すのが、その製法。

多くのシャンパーニュメゾンが、通常のシャンパーニュに
赤ワインをブレンドすることでロゼシャンパーニュを造るのに対し、
ルイ・ロデレールでは、ピノ・ノワールをスキンコンタクトさせることで
この淡い独特の色合いを生み出します。

この製法は、色の抽出のタイミングが難しいのですが
やはり繊細な風味とコクは、スキンコンタクトならでは。
ジャノー氏も、

「特別な時に飲みたいのは、この製法で造られたロゼシャンパーニュ。
 恋人同士で飲むロマンティックな夜のシャンパーニュはこれ!」と力説していました。

赤系果実の華やかなアロマに
ほんのりとエキゾチックやチョコのアロマ。
複雑で芳醇な香りとコクはさすが!
とっておきのディナーに開けたい1本です♪


















クリスタル 2007年 / ルイ・ロデレール
28,000円(30,240円 税込)

そして、ロデレールが誇るプレスティージュ・キュヴェ
クリスタル。

ジャノー氏曰く

「これほどまでに余韻・波長のあるシャンパーニュはクリスタルだけ。」

とのこと。

何でも、社長、醸造責任者を含む数十人で、
他のメゾンのプレスティージュ・キュヴェとクリスタルを
ブラインドでテイスティングしたところ、ほぼ全員が
「これがクリスタルだ。」と銘柄を的中させたそうです。

樽の風味が強かったりと「醸造」による個性が強い
プレスティージュ・キュヴェも多い中、クリスタルの特徴は
「ブドウの良さがストレートに表現されている」点にあるそうです。

なるほど、ファーストインパクトは強くないですが、
非常に繊細できれいな余韻が長く長く続きます。

また、ルイ・ロデレール社が他の大手メゾンと異なる
もう一つの取り組みが「ビオディナミ」。
小規模生産者でビオディナミを取り入れている造り手は多いですが
大手のメゾンで取り組んでいるのは、ロデレールくらいではないでしょうか。














ビオディナミを取り入れることによって、
ブドウが「聞き分けの良い子供のように落ち着いてきた」そうです。

現在、クリスタルに使われるピノ・ノワールは100%ビオディナミ。
シャルドネはまだ100%ではありませんが、3年後には全てビオディナミになるそうです。


家族経営の老舗メゾンというと、
保守的なイメージがありますが、ルイ・ロデレール社は、
フィリップ・スタルクと共同で開発した「ブリュット・ナチュール」や
ビオディナミ栽培のように、他メゾンと比べてもかなり先鋭的な取り組みをしています。
しかも、それがコンセプト先行ではなく「品質重視」である点が
世界でも高く評価されている所以なのではないでしょうか。




2015年10月27日火曜日

文学ワイン会「本の音 夜話(ほんのね やわ)」歌人・穂村弘さん登場!

先月、第6回文学ワイン会「本の音 夜話」が
ワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー・エノテカ・ミレで開催され、
当代きっての人気歌人・穂村 弘さんにゲストでお越しいただきました。





















実はあまりお酒が飲めないとのことでしたが、
「でも、今日は飲みます」と穂村さん。
お客様とともに乾杯していただき、会がスタートしました。


まず話に上がったのが、ソムリエが使うテイスティング用語について。
「僕らは短歌を作っているけど、
それ以上にメタファーを使う唯一の職業が
ソムリエだと勝手に思っているんです。
味の表現って基本、例えを使うんですよね、枯草とか革とか血液とか猫とか。
それがすごいなって憧れているんです。」


お酒と短歌。実はとても相性がよいものだそうです。

「岩波現代短歌辞典という本があるんですね。
歴史的に短歌にたくさん使われてきた強い項目は大項目といって、
例えば「桜」は見開き。桜の歌は有名なのがいっぱいありますからね。

それで酒はどうかなって思って見たら、見開きで大項目です。
大項目は辞典の中でもそんなに数は多くないから、
酒に関して言うと、短歌と相性のいいすごく強力な項目と言えます。」



奈良時代の歌に始まり、明治時代や現代の歌、

穂村さん自作の歌まで、
お酒は様々なシーンやシチュエーションで詠まれ続けています。

















お酒の歌って作りやすいんでしょうか?

「酔うとやっぱり行動や言動がヘンになるでしょ。
ヘンになったものをそのままスケッチすると、
もうひとつの世界みたいなものがそこには生まれる。

詩や短歌は、“もうひとつの世界”が書きたいんですよね。
だけどシラフの頭の状態っていうのは、ちゃんとしすぎてる。
それがお酒の作用によって、

みんなちょっとだけずれてアーティスティックになれるんでしょう。」

当日会でご提供したワインは、
ムートン・カデ・レゼルヴ・ソーテルヌ。
甘いもの好きだった穂村さんにちなんでセレクトした、
上品な甘味を持つデザートワインです。
甘いものは定数値を食べた(!)ので、
今はあまり召し上がられていないとのことでしたが、

こちらの甘口ワインは美味しいと言っていただきました。

















ムートン・カデ・レゼルヴ・ソーテルヌ2012 甘口白 税込5,184円



今回、穂村さんをゲストにお迎えするにあたり、
事前にお酒にまつわる短歌を募集したところ、
全部で50首近くの応募をいただきました。

全てをご紹介したいところですが
今回は、当日穂村さんが取り上げられた歌をご紹介します。

▼▼▼

ソムリエのように教えて外国(とつくに)の葡萄畑の土の香りを  ―――鈴木美紀子

カベルネとメルローの違い語るほど時計とスマホ交互に見る君  ―――きくちゃん

収集日ビンを捨てたる手は止まり隣の家の年収ぞ知る  ―――いんこ

ここにはぁぁぁとしてくださいと囁いた溜息収集警察官は  ―――鈴木晴香

私より遺伝子情報確かなるワインラベルを読み解く月夜  ―――West Child

こんこんと眠らせていた口づけがワインとともにささやく夜更け  ―――絢森

氷片を指でつつけばサングリア他人のことなど忘るるが良い  ―――竹内通代

暑い夏寝苦しい夜に白ワイン 空けたボトルに翌日驚愕  ―――水原ゆり

二日酔いもう飲まないと決めたのに 気づけば向かういつものお店  ―――長崎一郎

おいしいよそっちはどう?とグラス替えふたり行き着く琥珀の港 ―――シャトー・ラ・ポンプ

枇杷山椒夕立のあとのアスファルト梅干しママカリ蓮根でどう  ―――Y・H

爽快で冷たい泡が流れ込み絡まりほぐれてまた生き返る  ―――333


みなさんとても上手だと、穂村さんも絶賛!

会場は大いに盛り上がり、
穂村さん独自の世界観や、ユニークなエピソードもたくさんお話いただき、
クスクス笑いの絶えない楽しい時間となりました。

短歌を詠むこともワインを飲むことも、
もうひとつの異なる世界の扉を開いてくれるもの。
穂村さんのお話を聴いていると、短歌の自由さ、面白さが実感でき、
無性に歌を詠みたくなってきました。

皆さんもたまにはワインを飲みながら、
自由な気持ちで一首、詠んでみてはいかがでしょうか。





















『ぼくの短歌ノート』(講談社)
定価1500円+税

2015年10月21日水曜日

シャトー・ムートン・ロスチャイルドの最新アートラベル発表!

毎年心待ちにされている方もいらっしゃるかと思いますが、
シャトー・ムートン・ロスチャイルドの最新ヴィンテージの
アートラベルが本日発表されました!























2013年のアートラベルを手掛けたのは、
日本で活躍する韓国人アーティストの李禹煥(リ・ウーファン)氏。

 李氏は、1936年生まれの韓国人。
1956年、20歳で日本に移住し、日本大学で哲学の学位を取得。
現在はアーティスト兼哲学者として活躍しています。
自然の素材を用いて表現される、
抽象的で強烈な個性を持つ作品は世界中の権威ある賞を受賞。
2000年の上海ビエンナーレでのユネスコ賞をはじめ、
ベニス・ビエンナーレ、パリのジュ・ド・ポーム美術館、
ニューヨークのグッゲンハイム美術館などで作品が展示されています。

2010年には、作品を高く評価する安藤忠雄氏が設計した美術館が直島に落成。
また、2014年にはパリのヴェルサイユ広場に多数の作品が展示されました。





















↑李禹煥(リ・ウーファン)氏

そんな李氏が手がけた2013年のアートラベル。
紫色のはっきりとしない線描が徐々に鮮やかさに満ちていき、
ワイナリーの中でやがて偉大なワインになる神秘が表現されています。

2013年ヴィンテージは、めまぐるしく天候が変わりましたが
最後は素晴らしい収穫となり、ボディのしっかりとした
典型的なボルドーワインに仕上がりました。

1945年から始まったムートンのアートラベル。
ダリ、セザール、ミロ、シャガール、ピカソ、ウォーホル・・・
そして、タピエス、ジェフ・クーンズなど
時代の最先端を走る現代アーティストたちがそのラベルを手掛けてきました。

 60年以上続いたアートラベルの歴史の中でも、
今回の李の作品は、最もミニマルなデザインではないでしょうか。

例年以上に話題を呼びそうなアートラベル、
来年のワインリリースが楽しみです♪

2015年10月16日金曜日

ナイトハーヴェスト初体験!

今日本のワイナリーは続々と収穫を終えているようですね。
 
実はエノテカ・スタッフ有志がブドウの収穫、
しかもナイトハーヴェストを初体験してきました!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

↑サントネージュワイン
 
収穫に参加させていただいたのは、
先日ブログで紹した、山梨のサントネージュワイン。
1947年創業、いち早く欧米品種の栽培に取り組んできたワイナリーです。

今回ナイトハーヴェストを実施する牧丘倉科畑は、
日本一の巨峰産地として知られる山梨市牧丘町にある
サントネージュワインが自社所有する畑。
標高750mという高地にあります。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

↑こちらは8月に撮影した昼間の牧丘倉科畑。右上に富士山が見えます。
 
ナイトハーヴェストとは、真夜中にブドウを収穫すること。
なぜ真夜中に実施するかというと、
ブドウは気温が低い真夜中の時間帯が
最もフレッシュなアロマと果実味を備えており、
その時間帯に収穫することで、
アロマに富んだフレッシュなブドウを手に入れることができるそうです。
 
今回ナイトハーヴェストを実施したのはシャルドネ。
サントネージュワインでは、
数年前からシャルドネのナイトハーヴェストに取り組んでおり
これによって劇的に品質が向上したそうです。
 
たった1haの畑に、カベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネが植えられています。
晩熟のカベルネの収穫はまだ先、
ということでシャルドネのナイトハーヴェストが先に始まりました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

総勢19名がワイナリーに集合し、
車に分乗して約15分で倉科畑に到着。
午前3時から収穫が始まります。
 
畑は山の中腹にあり、真っ暗な中をライトの明かりを頼りに進みます。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

↑ヘッドライトを付けてブドウを収穫。
 新梢から3房目以降のブドウは、もったいないですが切り落としてしまいます。
 
前日からの冷え込みで、体感気温は12月のような寒さ。
それに加えて、収穫するシャルドネもとても冷たい!
手がかじかんできますが、
この冷たさが美味しいワインにとって大切、と思いながら
ハサミで手を切らないように慎重に収穫を進めます。
シャルドネを口に入れてみると、その甘さに驚きました。
 
今年は日本ワインにとって厳しい年でした。
7月の長雨によって、ブドウは成熟不足や腐敗に悩まされたそうです。
今回の収穫の前日に3人がかりで1日かかって
そうした未熟果や腐敗果を取り除く作業を行いましたが、
それでも取りきれなかったブドウの房や粒は、
収穫作業中にライトで照らしながら、丁寧に取り除いていきます。
 
結果、今回の収穫量は去年より大幅に減少してしまいましたが
それも例年以上に厳しい選果をしているがゆえ。
 
作業開始から約2時間。
5時頃に全ての収穫作業が終わり、
トラックにブドウが入ったカゴを載せて、早速ワイナリーへ戻ります。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

↑夜明けの倉科畑。昼間とはうって変わって、藍色の稜線が美しい。
 
 
収穫後のブドウは鮮度が命!
ワイナリーに戻ったら、早速圧搾作業が始まります。
 


 
 
 

 ↑ブドウは次々と圧搾機に運ばれていきます。
 
サントネージュワインでは
おそらく日本で所有しているワイナリーはほとんどないと言われる
最新鋭の除梗破砕機を使って、ブドウと枝を分けていきます。
 
旧来の除梗破砕機は、機械の噛み合わせで
荒く枝と果実を分別しますが、
こちらの機械は細かな振動でやさしく枝と果実を切り離すため、
旧来の機械と比べて時間はかかるものの、
余分な果汁が流れ出ることなく、より繊細な除梗ができるそうです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

↑ブドウの果汁を搾汁中。
 
除梗し、選果したシャルドネは
皮と共にしばらく置く「スキンコンタクト」を行い、旨みを抽出します。
 
その後、このブドウから果汁を絞る搾汁を行いますが、
この搾汁を終えるタイミングがとても重要。
 
最初に出てくる果汁は透き通っていますが
最後の方になるにつれ、皮の成分や酸化の影響で色は濁って濃くなっていきます。
早々に切り上げると、すっきりとした果汁がとれるがコクが足りない、
ただ長く搾り続けると、えぐみが強い味になってしまうそうです。
透明感がありながら適度なコクがある、そんなタイミングを見極めるのが難しいのです。
 
栽培・醸造担当の宮川さんが、何度も味見をして、
搾汁を終えるタイミングを吟味していました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

↑こちらが搾りたての果汁。リンゴのような爽やかな香り。
 はっとするほどフレッシュで、甘くて、美味しい。
 しっかりと選果されているだけあって、とてもクリーンな味わいです。
 
搾汁した果汁はタンクに移され、一時発酵を行い、
その後に木樽に移され、さらに発酵が続きます。
 
午後2時頃、ようやく全ての工程が終わりました。
 
夜中の2時から始まり、約半日間。
このたった半日の仕込みが、約1年後、
来年のワインの完成に関わっていると思うと、
わくわくするような、不安なような。。
ワインメーカーの方の苦労が、少しだけ経験できた貴重な半日間でした。

今回収穫をお手伝いした牧丘倉科シャルドネは、
まだワインを仕込み始めて4ヴィンテージ目という若いワインですが
恵まれた土地を最大限に生かしながらも
毎年新しい取り組みを行って年々進化しています。

何と言ってもその特徴は、ワインのフレッシュで華やかなアロマ!
これこそ、ナイトハーヴェストの賜物と
収穫に参加して改めて感じました。

2015年は収穫量も少なく厳しい年だったようですが、
厳選されたブドウからとれた果汁の味わいは、
透明感がありながらも凝縮した、旨み溢れるものでした。

きっと倉科畑のテロワールが感じられるヴィンテージになるのでは?
来年のリリースが今から楽しみです♪

▼サントネージュのワインはこちら▼
http://www.enoteca.co.jp/item/list?_producer=987
 

2015年10月7日水曜日

レオヴィル・ラス・カーズを所有するボルドーの名門、ドメーヌ・デュロン来日!

先日、ボルドーの名門、ドメーヌ・デュロンより
マネージングダイレクターのピエール・グラフィール氏が来日。
ドメーヌが造るシャトーワインの数々をご紹介いただきました。





















↑マネージングダイレクターのピエール・グラフィール氏

そもそも、デュロン?
という方もたくさんいらっしゃるかもしれません。
「メドック格付け第2級のシャトー・レオヴィル・ラスカーズを所有する名門」
と言うとピンと来るでしょうか。

スーパーセカンドの筆頭として真っ先に名が上がる
シャトー・レオヴィル・ラスカーズ。
デュロン家は、19世紀からずっとこのシャトーを所有する
名門ファミリーです。
























レオヴィル・ラスカーズの評価が他の2級シャトーと比べても
抜きんでているには訳があります。
シャトーがあるのはサン・ジュリアン最北部、
北部に位置するポイヤックとの境界に接しているのがラスカーズです。
しかも、その畑は格付け第1級のシャトー・ラトゥールと地続き。
ジロンド河の側の丘に位置することで知られるラトゥールですが、
ラスカーズもラトゥールと並んで、ジロンド河の側に位置しています。

このジロンド河から運ばれた砂利質の土壌を中心として
50以上の複雑な土壌がモザイク状に散らばっているのが
レオヴィル・ラスカーズに複雑さを与えていると言われているそうです。
また、砂利質の土壌は水はけがよく、ジロンド河からの風で
夏は涼しく、冬は暖かい温度が保てるとか。

冷涼なボルドーで、晩熟のカベルネを育てるには
いかにして温暖な気温を保つかが重要となります。
河や海に挟まれていることで、冬は暖かい蒸気が畑に吹き込み、
逆に夏は冷たい風が吹き、ブドウは見事に完熟します。


















↑ラスカーズとクロ・デュ・マルキの畑。土壌の複雑さがわかります。
 ※ドメーヌ・デュロンHPより


実はドメーヌ・デュロンは、レオヴィル・ラスカーズ以外にも
2つのシャトーを所有しています。

1つが、メドック北部にあるシャトー・ポタンサック。
デュロン家が中世から所有している歴史あるシャトーで
太平洋とジロンド川に挟まれているテロワール。
メドックという地名はラテン語で"medio aquae"
つまり「in the middle of the waters=水の中央」
という語源から来ており、まさにそのテロワールを体現するようなシャトーです。
土壌は、粘土質の表土の下に砂利質が広がります。

このポタンサックは、メドックで唯一クリュ・ブルジョワに選ばれ
クリュ・ブルジョワ・エクセプショナル(ブルジョワ級の最高峰)となったという実力を誇ります。
(2009年には辞退したため、現在は格付けなし)

ラスカーズと同じチームが、
格付けシャトーと同じ醸造方法、同じ情熱をもって造っているとのこと。
















↑シャトー・ポタンサック 2012年 3,672円(税込)

2012年をテイスティングしましたが、
よく熟した黒系果実、リコリス、そしてバニラの香り。
適度な凝縮感があり、格付けシャトーと見まがう高級感が感じられます。
長期熟成が可能なシャトーとして知られますが、
今飲んでもジューシーな美味しさが存分に楽しめます。
週末にご自宅でお肉料理などと楽しむにはピッタリではないでしょうか。


もう一つ、ポタンサックの敷地内で造られるワインがシャトー・ラサール。
エノテカが独占輸入している銘柄です。
こちらは特に砂利質が多い土壌の畑のブドウを使用しており
赤系果実の華やかな香りと、透明感のある果実味
そして綺麗なミネラル感が特徴です。
















↑シャトー・ラサール 2008年 3,888円(税込)


7年の熟成を経て、少し熟成香も出てきていますが
生き生きとした酸味と、凛としたミネラルがあります。
こなれていて、これほど綺麗にまとまった手ごろなボルドーワインは
中々ないのでは?
テイスティングしたスタッフからも「手頃な値段だけど、さすがラスカーズ・・」と
その美味しさに驚きの声があがったほどです。
とても品がよく、シンプルにローストした鴨肉などよく合いそうです。


そして忘れてはならないのが、
デュロン家が唯一ボルドーの右岸に所有するシャトー・ネナン。
ポムロルの中心部に位置し、周りには
ル・パンやトロタノワといったスターシャトーがある絶好の立地。

こちらもラスカーズと同じチームが醸造を担当しています。















↑シャトー・ネナン 1998年 17,280円(税込)



















↑ドメーヌ・デュロンが所有するシャトーワインの数々。


グラフィール氏のレクチャーで特に印象的だったのが
全てのシャトーの詳細な地図、そして土壌の細かな分析結果を
子細に説明していだいたこと。
(ドメーヌ・デュロンのHPに子細な地図が掲載されています!)
http://www.domaines-delon.com/en/accueil.html

醸造はもちろんですが、恵まれたテロワールを熟知し、
最適な方法でブドウを栽培することで
素晴らしい品質のワインを生み出しているということが伝わってきました。

ラスカーズをはじめ、どのワインも凛とした高貴さが感じられるのは
恵まれたテロワールを、まっすぐに表現しているからなのかもしれません。


2015年9月29日火曜日

富士山を望む絶好の立地で生まれる日本ワイン

只今エノテカ・オンラインで絶賛販売中の日本ワイン、
「サントネージュ・エクセラント 牧丘倉科畑」。

実は、販売開始前の8月
スタッフたちがワイナリーを訪問していました。
遅ればせながら、今回はその時のレポートをお届けします。
















↑サントネージュワイナリー 

山梨県の多くのワイナリーが勝沼市にある中、
サントネージュワイナリーは山梨駅から歩いて数分のところにあります。

1947年に誕生した醸造所からスタートしたサントネージュワイン。
当初から他社に先駆け、ヨーロッパのブドウ品種セミヨンと
カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に着手し、
日本のワイン造りの基礎を築いてきたワイナリーです。
サントネージュとはフランス語で「聖なる雪」という意味。
甲府盆地から見える富士山を白く染める雪をイメージしてその名がつけられました。

今回の目的は、このサントネージュワイナリーが初めてリリースする
単一畑のワイン「牧丘倉科畑」を見学することでした。

 














 ↑こちらがその「牧丘倉科畑」。右上に小さく見えるのが富士山です!

山梨市の牧丘町は、山梨県内でも特に標高が高く、
日照時間が長いため「巨峰の里」と呼ばれる日本一の巨峰産地として知られていましたが、
サントネージュでは、ワイン用のブドウ栽培に早くから注目。

山梨市牧丘町のにある、たった1haという猫の額ほどの小さな畑に、
1979年よりブドウを植えはじめました。
それが、この倉科畑です。

倉科畑があるのは、ワイナリーから車で15分ほどの場所。
巨峰畑を横目に、曲がりくねった坂道を何度も折り返して登って行き、
ようやく着いたのは標高750mという高台にある斜面です。

南向きのその斜面は、そこだけ視界が拓け、素晴らしい眺望が広がります。
素人目に見ても「ここはただならぬ畑だ・・・」と思ってしまいそうな、美しい畑です。






















↑畑を案内してくれた、栽培担当の宮川さん 
ワインが大好きという、研究熱心な生粋のヴィニュロンです。

この1haの畑に植えられているのはシャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨン。
「サントネージュのグラン・クリュを造りたい」
という想いから、この倉科畑の名を冠したワインをリリースすることになりました。
初回のリリースは、カベルネとシャルドネ合せてたった1,500本ほど。

倉科畑は、その標高の高さから、
地上の盆地と比べて平均気温は3℃くらい低く、
ブドウの生育具合も山形県と同じ位のスピードだそうです。
気温の低さのおかげで、しっかりとした酸を備えたワインができます。

















↑垣根栽培が行われている畑

ブドウは全て垣根栽培。
日本のワイナリーでは棚づくりが一般的でしたが
近年ではヨーロッパのワイン造りに倣い、垣根栽培を採用するワイナリーが増えています。
サントネージュでも、2006年より全ての苗木を垣根栽培に改植しました。

垣根栽培にすることで収量は減りますが
その分凝縮したブドウを収穫できるようになったそうです。

また、シャルドネの栽培には、真夜中に収穫を行う
ナイトハーヴェストを取り入れています。
気温の低い夜間にブドウを収穫することで、
果実のフレッシュなアロマが豊かなブドウを手に入れることができます。

ただ、夜中に起きて、
真っ暗な畑の中をヘッドランプの明かりだけを頼りに
ブドウを収穫していくのは危険が伴う大変な作業だとか。。

倉科畑はたった1haという畑だからこそ、
垣根栽培やナイトハーヴェストといった革新的な技術も
素早く取り入れることができるようです。





















サントネージュ エクセラント 牧丘 倉科畑収穫シャルドネ
3,700 円 (3,996 円 税込)

こちらがそのナイトハーヴェストのシャルドネ。
国産のシャルドネは、
ヨーロッパや南米のチリと比べて、香りが穏やかというイメージがありますが
こちらは、とっても華やかな香りが特徴。

白い花のような優しい香りや柑橘系のフレッシュな香りに
少し青みがかった南国系フルーツの華やかなアロマも感じられます。
このみずみずしい香りこそ、ナイトハーヴェストが出せるものなのでしょう。






















↑畑に植えられているバラ。バラは、とっても弱い植物なので
 畑の病害虫をいち早く察知するアンテナ的な役割を果たしています。


宮川さんの目標は

「ワインの香りを嗅いだときに、この風景が浮かぶようなワインを造りたい。」

とのこと。
確かに、シャルドネの香りを嗅いだとき、
富士山を望む美しい倉科畑の風景が脳裏に浮かんだような・・・

真偽のほどは、皆様もぜひその「鼻」で確かめてみてください♪


▼ご購入はこちら▼※在庫は残り僅かです。
サントネージュ エクセラント 牧丘 倉科畑収穫シャルドネ










2015年9月17日木曜日

ワインジャーナリスト山本昭彦さん『50語でわかる! 最初で最後のシャンパン入門』トークイベント開催


先日、ワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー エノテカ・ミレにて、
ワンジャーナリストの山本昭彦さん著
50語でわかる! 最初で最後のシャンパン入門』の刊行に合わせた
スペシャルトーク&テイスティングイベントが開催されました。

山本さんのトークのお相手は、長年のご友人である
ワインコーディネーターの山田久扇子(くみこ)さん。
著書内の死ぬまでに飲みたい50本のシャンパンで紹介された
シャンパーニュ5種類を順番に味わいながらトークがスタートしました。




 


















山本昭彦さんと山田久扇子さん

「現地を実際に歩いて聞いた栽培や醸造の話に加え、
それぞれのメゾンにどういう動きがあるのかお話していきたいと思います」
との言葉どおり、生産者に直接取材し、
数々のシャンパーニュを飲んでこられた山本さんならではの
エピソードが次々に飛び出しました。

中でもルイ・ロデレール クリスタルについて山本さんは、
欠点の見当たらないシャンパーニュと絶賛!

クリスタル2006を飲みながら特に詳しくお話いただいたのは、
ルイ・ロデレールの醸造責任者、ジャン・バティスト・レカイヨン氏について。

 



















ルイ・ロデレールの醸造責任者、ジャン・バティスト・レカイヨン氏

山本さん曰く、真剣なワインメーカーであるレカイヨン氏は、
1989年にモンペリエの国立農学校を栽培と醸造どちらの分野も主席で卒業。
そんな才能溢れるレカイヨンさんに目を付けたのが
当時のロデレール社長ジャン・クロード・ルゾー氏。
早速彼を醸造担当として抜擢し、ロデレールに入社となりました。

レカイヨン氏は1999年から責任者となり、栽培と醸造の両方を統括していますが、

「栽培と醸造はまったく異なる仕事で、両方見るのはとても大変。
これが彼のすごいところ。」
「ロデレールのワインの完成度の高さは彼によるところが大きい。」

とのこと。

また、

「現在ロデレールの畑は、ほとんどビオディナミとビオロジックで、
2020年までに完全にビオディナミに移行するそうです。
雨が多いシャンパーニュの地で、ビオディナミをやるのは大変。
これはロデレールがほとんど自社畑(70%)であることからできることなんです。」

と、同社の最新の取り組みについても語っていただきました。

山本さんと山田さんのわかりやすく興味深いお話に、
会場からはときどき笑いを呼びながら、
皆様シャンパーニュをじっくりと味わっていらっしゃいました。

















ちなみに会の終盤、お客様からの質問

山本さんが今までで一番感動したシャンパーニュは?
に対する答えは「クリスタル1996年」!

レカイヨン氏は
「クリスタルは20年は寝かせて飲んでほしい。置いておくとまた素晴らしい」
と熟成をおすすめしているとのこと。
20年も待つのはなかなか大変ですが、いつかは試してみたいですね
 
山本さんの膨大なシャンパーニュの知識を惜しみなく披露いただきながら、
おすすめのシャンパーニュを味わう、大変充実したひとときとなりました。
著書『50語でわかる! 最初で最後のシャンパン入門』には、
山本さんご自身が身体を使って集めたシャンパーニュ情報が満載です。
知っていて得をする豆知識もたくさんあり、初心者~上級者の方に広くおすすめできます。

これから、シャンパーニュを楽しむ機会が増える季節を迎える前に
是非一度読んでみてはいかがでしょうか(^^)



 

 

 













50語でわかる! 最初で最後のシャンパン入門』(講談社)
著:山本 昭彦  定価:1200円+税