2016年4月24日日曜日

ブルゴーニュの鬼才が造るシャトーヌフ・デュ・パプ

先日、ブルゴーニュで「ルシアン・ルモワンヌ」を
そして南仏シャトーヌフ・デュ・パプで
「ロテム・アンド・ムニール・サウマ」を手掛ける
オーナー兼ワインメーカー、ムニール・サウマさんが来日。
スタッフ向けセミナーが行われました。

今回紹介していただいたのは、
シャトーヌフ・デュ・パプ「ロテム・アンド・ムニール・サウマ」のワイン。

2009年、ムニール・サウマさんと奥さんのロテムさんが
シャトーヌフ・デュ・パプに畑を購入して始めたドメーヌです。

















↑ロテムさんとムニールさん。 奥様のロテムさんは農業校でワイン造りを学び、
 コート・ドールについて書いた論文が
フランス農業アカデミーより賞を受けたという才媛です。

ルシアン・ルモワンヌと言えばブルゴーニュワイン。

 「なぜシャトーヌフ・デュ・パプで」

と尋ねたところ、こんな答えが返ってきました。

 「ブルゴーニュのブドウ品種、ピノ・ノワールも
  シャトーヌフ・デュ・パプのブドウ品種、グルナッシュも兄弟だから。」


 ピノ・ノワール、グルナッシュ・ノワール
 ピノ・ブラン、グルナッシュ・ブラン

という呼び名が付いているように、両者は同じルーツをもつブドウ品種。
さらに、どちらも「ブドウの実」すなわち皮を取り除いた
ジュースが白いことが共通しているそうです。

そしてこのジュース自体は非常にニュートラル。
ジュース自体にも色がついており、
個性があるカベルネ・ソーヴィニヨンやソーヴィニヨン・ブランなどのブドウとは
性質が異なるそうです。

ジュース自体がニュートラルであるという性質が
ピノ・ノワールやグルナッシュは「土地の味わいを表現することができる」
所以だとか。なるほど。















そういえば、シャトーヌフ・デュ・パプの名門として知られる
ヴュー・テレグラフのダニエル・ブルニエさんも

「グルナッシュは土地のアンバサダー」

という表現をしていました。

サウマさんのワイン造りは、とにかくユニーク。
「100年前のワイン造りを再現する」をコンセプトに
極力人の手を介入させない自然なワイン造りが知られています。

特にこだわっているのた木樽による熟成。

収穫したブドウはコールドマセラシオンを行い
その後、木樽に入れて熟成を行いますが、何とその期間約2~3年間。
サウマさん曰く

「2年間放っておくだけ。なーんにもしない。」


















「何にもしない」は言い過ぎですが・・
通常の生産者は木樽熟成中、澱引きを頻繁に行いますが、
サウマさんが行うのはCO2(二酸化炭素)ガスを抜くことくらい。

また、サウマさんのワイン造りでは、
SO2(亜硫酸塩)をほとんど添加しません。
それによって、酵母が自然な発酵を進めるため
通常の数倍のCO2が発生するそうです。
そしてこのCO2が、膜のような働きをしてワインの酸化を防いでくれるそうです。

ただ、SO2を加えないと、
好ましくない酵母が活性化する恐れもあります。

特に亜硫酸塩の添加を減らすと、「ブレット臭」という
不快な匂いを発生させる酵母が発生する確率が高くなるため、
サウマさんのワイン造りについて、同業者から多くの反発を受けたそうです。

また、こうした酵母の繁殖を防ぐため、 
多くの生産者が年に5回ほど澱引きをするとか。
これに対してサウマさんは、1度も澱引きをしません。

これについてサウマさんは

 「リスクを取らないとOutstandingなワインはできないよ。」

と力説していました。

取り扱いはとても難しいものの、
澱引きをすると、熟成中のワインは必ず空気に触れてしまいます。
それを繰り返すことで、ワインはどんどん疲れてしまうそう。

熟成中のワインを「赤ちゃん」と表現し、
その「Purity=純粋さ」が大切、と何度も語っていました。

正しい温度と方法でワインにできる限り触れずに熟成させることで
フィネスを備えたワインが生まれるそうです。
























↑サウマ流デキャンタ



こうして長期間樽で澱引きせずに熟成されるワインは
大量のCO2を含んでいるため、
大胆なデキャンティングでガスを取り除きつつ一気に空気に触れさせます。

デキャンタに勢いよく注がれるワイン・・・
「そんな勢いよくていいの?」とハラハラするスタッフに

「リシュブールだってこうしているよ。ワインと酸素はお友達~♪」

と楽しそうなサウマ氏。
長い間ほとんど空気に触れずに眠っていた「赤ちゃん」のようなワインは
こうして一気に目覚めます。

サウマ氏曰く、

「空気にほとんど触れさせていない、疲れていないワインだから長持ちするんだ。」

サウマ氏のワインは、香りもさることながら、全てのワインに共通して
奥深いフィネスが感じられ、
時間と共に目まぐるしく変化していくのが特徴的。 
抜栓後、数日置いても素晴らしい変化が楽しめます。



▼サウマさんが造るシャトーヌフ・デュ・パプはこちら▼
http://www.enoteca.co.jp/item/list?_label=Z2


2016年4月17日日曜日

4月17日、今日は何の日?

4月17日、本日は何の日かご存知ですか?

本日は「マルベックの日」。

なぜ、本日4月17日がマルベックの日なのかというと、
アルゼンチンで農学研究所と農学学校の創設を求める法案が
州議会に提出されたのが1853年4月17日だったそうで、
この日をマルベックの発展を祝す日にしたい、
ということで制定されたそうです。

マルベックと聞くと、
アルゼンチンワインを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
ボルドーワインやフランス・南西地方カオールのワインを思い浮かべた方は
フランスワイン通ですね。

今やアルゼンチンワインを代表するブドウ品種、マルベックは
1800年代後半にフランスから持ち込まれました。

















1800年代にはボルドーでブレンド品種として
多くのシャトーが使用していたマルベックですが
病害虫に弱く、次第に廃れていきました。

また、カオールは別名「黒ワイン」とも言われ、
野性的で荒々しいほどのタンニンが特徴。
飲み頃になるまで長期熟成が必要なワインとして知られています。

ところが、アルゼンチンに持ち込まれたマルベックは、
アンデス山脈の麓という高地での栽培によって
(アルゼンチンではほとんどのブドウが
標高700m~1,500mという信じられないほどの高地で栽培されています)
独自の進化を遂げます。

昼夜の寒暖差が激しく非常に乾燥しているアルゼンチンでは
過酷な環境であるが故、病害虫がつかず、
そしてブドウの果実が種までしっかりと熟すことで
荒々しいタンニンは押さえられ、
凝縮感が際立つ丸みのあるワインが生み出されるようになりました。


















チリのカベルネ・ソーヴィニヨンしかり、
ヨーロッパから持ち込まれて新天地で成功したブドウ品種は数あれど、
まだまだ本家の方が知名度も人気も上、
ということが多いのも事実。

本家フランスから換骨奪胎して成功を収めた
マルベックのようなブドウ品種は他にないかもしれません。

アルゼンチンが国を挙げて世界中でプロモーションをしているのも納得。
それだけ自国のマルベックに自信があるのですね。


さて、アルゼンチンというと牛肉大国。
もちろんマルベックは牛肉ととても相性がいいのですが、
実は、魚や野菜料理にも合うということをご存知ですか?

先日、ボデガ・ノートン社のマイケル・ミュラーさんが来日した際、
マルベックのワインに合わせた料理の一つに「スズキのグリル」がありました。

「白身魚とマルベック!?」と思いましたが、
甲殻類からとった濃厚なソースを合わせたやわらかいスズキは、
濃厚だけれどシルキーなタンニンをもつマルベックと、抜群の相性でした。
魚料理と合わせる際には、フレッシュさが際立つよう、
ワインの温度を低め(16℃~)で提供することがポイント。

また、現地では、
暑い日にはマルベックをクーラーで冷やして飲むそう。
タンニンがまろやかだからこそ、冷やしてもざらつきは一切感じません。
なるほど、これは日本でも真似したい楽しみ方です。

アメリカではすでにマルベックブームが来ているそうですが、
合わせる料理の幅が広いマルベックは、日本でもブームが来そうな予感。


では、おすすめのマルベックをいくつかご紹介します。




















マルベック・レゼルヴァボデガ・ノートン

1,900 円 (2,052 円 税込)


こちらは、オーストリアのスワロフスキーが所有するワイナリー
ボデガ・ノートン社が造る1本。
ワインメーカーは、南米で初めて
「ワインメーカーズ・オブ・ザ・イヤー」を獲得したホルヘ・リッチテッリさん。
アルゼンチンを代表するワイナリーの一つです。

樹齢80年以上という高樹齢のマルベックを使用。
華やかでよく熟した黒系果実の香りと
ヴェルベットのような舌触り。

アルゼンチン産マルベックの実力を知るには
ぴったりの1本です。






















プリヴァーダボデガ・ノートン

3,000 円 (3,240 円 税込)

こちらは、マルベックに
カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロをブレンドした
ボルドースタイルのワイン。

マルベックならではの華やかな香りと丸みのある果実味に
カベルネのしっかりとした骨格が加わり
凝縮感がありつつも、非常に洗練された味わい。

マルベックを使ったワインの真骨頂というべき
世界クラスの赤ワインです。
ぜひ一度お試しください。



2016年4月10日日曜日

ムルソーの巨匠が新天地で手掛ける注目の白ワイン

ムルソーのトップ生産者として知られるコント・ラフォンより
当主のドミニク・ラフォンさんが来日。

彼がマコンで手掛けるワイナリー
「レ・ゼリティエール・デュ・コント・ラフォン」のワインについて
お話しを伺いました。


















↑ ドメーヌ・コント・ラフォンと
レ・ゼリティエール・デュ・コント・ラフォンを手掛けるドミニク・ラフォンさん


レ・ゼリティエール・デュ・コント・ラフォンは、
ムルソーから100㎞ほど南下したマコンにあり、
ドミニクさんが1999年に畑を購入して始めたドメーヌ。

英デキャンター誌が選ぶ「ブルゴーニュ生産者10傑」では2位に選ばれ
すでにブルゴーニュのトップ生産者としての地位を
確立している巨匠、ドミニク・ラフォンさん。

マコンというと、ブルゴーニュに比べると
まだまだ知名度の低いマイナーアペラシオン。
ムルソーのような高級ワインのイメージはありません。

マコンに進出したことについて、ドミニクさんは

「私の祖父は、まだムルソーが今のように注目されていなかった時代に
 多くの優れた畑を購入し、今のドメーヌ・コント・ラフォンを築き上げた。
 私はそんな祖父をとても尊敬していて、
 いつか自分もそんな産地を見つけて新しいワイン造りをしたいと思っていた。
 そうして見つけたのがマコンなのです。

 20年後には、マコンは今とは全く違う産地になっていると思います。」

と語ってくださいました。

実はマコンにはあのドメーヌ・ルフレーヴなど
ブルゴーニュの生産者たちが進出してきており
すでに注目の産地として知られつつあります。


今回は、畑や区画が異なる全8種のマコンをご紹介いただきました。



















↑ 8種のマコン 壮観です。



ブルゴーニュよりさらに南下した産地であるマコン。
実は地形は複雑で、ブルゴーニュより標高が高いところも多いそうです。
急峻に富んでいる地形のため、
南の畑のほうが北のそれよりも涼しい、なんてことも多いとか。

こうした豊かなテロワールを備えている産地だからこそ
区画ごとにワインを仕込みたくなるドミニクさんの気持ちもわかります。

実際に8つのキュヴェ、それぞれにキャラクターが全く異なり
非常に興味深いテイスティングでした。
中でも特徴的だったワインをご紹介します。





















 

ヴィレ・クレッセ




こちらは新しくリニューアルされたキュヴェ。
ドミニクさんが、
マコンの偉大なテロワールを表現していると評する銘醸地です。
こちらは、中でもシャトー・ド・ヴィレという
歴史ある生産者から購入した畑。
標高が高く、樹齢60年という高樹齢の樹が植えられており
ヴィレ・クレッセの中でも最も恵まれた畑の一つとのこと。

桃やパイナップルの豊かなアロマに
ウッド系のスパイス、ハーブのニュアンス。
さすが、ドミニクさんが「一番好きなキュヴェ」と話すように
他のマコンとは一線を画す個性を備えた1本です。


























マコン・ミリー・ラマルティーヌ



こちらはレ・ゼリティエール・デュ・コント・ラフォンが所有する
マコンの中でも最も標高の高い区画。
標高が高く冷涼なため、南に位置するものの
収穫は一番最後になるそうです。

シトラスフルーツの厚みのある果実味
石灰質土壌由来の強いミネラルと鮮烈な酸。
ドミニクさんが「食事が欲しくなるワイン」と喩えるように
収れん性のある心地よい酸味が、食事を引き立てそうです。
実際に、フランス本国のレストラン「ピエール・ガニェール」では
昔からこのキュヴェをオンリストしているとか。









先ほどのミリー・ラマルティーヌと対照的なのがこちら。
標高が低く、粘土質土壌の南向きの畑。
太陽の光をたっぷりと浴び、
良く熟した黄桃やトロピカルなニュアンスが特徴的です。
酸はそれほど強くなく、濃密なスタイルで
食事がなくとも楽しめる魅力をもっています。


マコンには毎週のように通い
ムルソーにかけるのと同じように情熱をもってワイン造りをしているラフォンさん。
 
 「コント・ラフォンのムルソーの名声は、私が生まれた時から確立されていました。
  でもマコンのプロジェクトは、自分で1から始めました。
  可能性のある新しい土地を見出してワインを造るのはとてもエキサイティング。
  そしてマコンのいいところは、ムルソーよりずっと気軽に楽しめること!」

リラックスした笑顔で語るドミニクさんに、
巨匠のもう一つの顔が見えました。
 




















↑ ドミニクさんが持ってきてくれた昔のポスター。
 彼が考えるマコンのイメージにぴったりなのだとか。


▼レ・ゼリティエール・デュ・コント・ラフォンの特集はこちら▼
http://www.enoteca.co.jp/item/list?_producer=201




2016年4月3日日曜日

伝説のゴルフ場設計家が手がけた限定ボトル「ムートン・カデ・ライダーカップ・スペシャルキュヴェ」

世界中で愛飲されているボルドーワイン「ムートン・カデ」。

このムートン・カデが、2016年ライダーカップの
オフィシャル・ワインに認定されたことを祝し、
ムートン・カデを造るバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社は
ワイン愛好家で伝説的なゴルフ場設計家のロバート・トレント・ジョーンズJr.氏と手を組み、
ライダーカップ限定ボトルをデザインしました。





















↑伝説的なゴルフ場設計家のロバート・トレント・ジョーンズJr.氏と
 バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社のユーグ・ルシャノワーヌ社長

ライダーカップとは、
ヨーロピアンツアーとアメリカツアーの代表選手が
2年に一度集まって行う団体のゴルフ対抗戦。

賞金ではなく勝利そのものがその報酬と言われる
プロスポーツの最高峰イベントで、
その開催回数は88年間で40回にも及びます。
1927年に始まり、イギリスの実業家サミュエル・ライダー氏が提案、
純金製の金杯を寄贈したことから「ライダーカップ」と名付けられました。


今年はアメリカ・ミネソタ州チャスカの
ヘーゼルタイン・ナショナル・ゴルフクラブで
9月27日から10月2日まで開催される2016年ライダーカップ。






















この2016年ライダーカップのオフィシャル・ワインとなり、
会場で振る舞われることになっている限定ボトルのデザインを手がけたのは、
伝説的なゴルフ場設計家ロバート・トレント・ジョーンズJr.氏です。

6つの大陸の40ヶ国以上で、275以上のコースを手掛けた、伝説的な人物で、
土地の景観を生かした美しいコースは多くの賞と称賛を獲得。
「世界中で最高のレイアウト」という評価を受けています。

彼は著名なゴルフ場設計家であった、
実父ロバート・トレント・ジョーンズ氏のキャディーとして、
ゴルフ場設計家の修業をしながら自身のキャリアをスタートさせました。




























今回のプロジェクトに際し、ロバート・トレント・ジョーンズJr.氏は
キャディーとしてスタートした自身のキャリアにインスピレーションを得て、
ムートン・カデの為にキャディーを描きました。

それは彼の父親と、ムートン・カデの創設者である
バロン・フィリップ・ロスチャイルド氏が
一族の末っ子(=カデ)であったこと、
そして自分もまた末っ子であることへの賛辞を表しています。

ロバート・トレント・ジョーンズJr.氏は、このプロジェクトについて

 「ワインはゴルフと同じで、情熱、自然に対する敬意、礼儀作法、
  人生の瞬間を分かち合うものです。
 
  ゴルフ場の設計家とワイン生産者は仕事に対するアプローチが似ています。
  例えば、自分に与えたれた土地を耕し、環境に真摯に向き合い、
  景色やワインで最も魅力的な部分をより高めていき、
  難関コースや試飲の喜びを提供します。
 
  ライダーカップは素晴らしいゴルファー達が一同に会し、
  個人の成績より団結心が意味を持つ試合で、
  それはブレンドしているワインが
  単一品種よりも特別なキュヴェを作るのにより適しているのと同じです。」


と述べています。
さすが、ワイン愛好家というだけあって
ボルドーワイン造りの本質を踏まえた見事なコメントですね。























こちらのスペシャルボトルは
4月下旬よりエノテカ・オンラインでも数量限定で発売予定です。

ゴルフ好きの皆さまはぜひお早めにチェックを!