2015年11月21日土曜日

アルゼンチンで独自のワインづくりを続ける若き情熱家

イタリアワイン好きなら知らぬ人はいない憧れの銘柄、サッシカイア。
イタリアでボルドー品種を育てて成功し
スーパータスカンブームを巻き起こした伝説の銘柄です。

実はそのサッシカイアのファミリーが
アルゼンチンでピノ・ノワールを造っているのをご存知でしょうか。

先日、そのワイナリー、ボデガ・チャクラより
オーナーのピエロ・インチーザ・ロケッタ氏が来日しました。

 


ピエロ氏は、イタリア、サッシカイアの創始者兼オーナーである
マルケーゼ・マリオ・インチーザ・ロケッタの孫にあたる人物。
幼少期をイタリア・トスカーナのマレンマにあるワイナリーで過ごしました。

スイスの名門校を卒業した後は、
銀行での短期間の勤務を経て、カリフォルニアで経済学を修め、
その後2003年にはニューヨーク大学で修士号を取得します。
幼いころから「ワイン生産者になる。」という夢があったというピエロ氏が
ニューヨークで行われたワインスペクテーターの試飲会で運命的に出会ったのが、
アルゼンチン・パタゴニア産のピノ・ノワールでした。

その試飲会場では、無数のピノ・ノワールが出品されており
ブラインドでテイスティングを行っていたそうですが
その時に飲んだパタゴニアのピノ・ノワールに衝撃を受け、
「このワインを造りたい!」と思ったそうです。

早速実行に移し、パタゴニアにある土地を購入し
ボデガ・チャクラを創設したのが2004年。
そこは、1932年に植樹された古樹のピノ・ノワールがある
大変ユニークな土地でした。















↑馬で耕される畑

チャクラがあパタゴニアのリオ・ネグロは
アンデス山脈と大西洋の中間あたりに位置。
非常に乾燥した気候が特徴で、四季がはっきりしています。
ピエロ氏は、世界に通用するピノ・ノワールを造るために、
有機農法とビオディナミを実施。

限りなく自然な醸造を行うことで、
現在では稀有な存在である、
接ぎ木を行っていない自根のピノ・ノワールならではの
ピュアで複雑性のある繊細な味わいを生かしたワイン造りを行っています。















↑近代的なワイナリー。グラヴィディティシステムを採用。

実はピエロ氏は、ブルゴーニュワインの熱狂的な愛好家。
好きな造り手は、ルソー、ルーミエ、デュジュックらだそう。
毎年ブルゴーニュに行って、生産者との交流を通じて
ワインを研究しているそうです。

チャクラのワイン造りに関しては、
「リオ・ネグロならではのテロワールを表現したい。」
と熱く語ってくださったのが印象的でした。


1年の1/3はアルゼンチン、1/3はニューヨーク、1/3はイタリアで過ごすというピエロ氏。
今後イタリアなど、他の土地でワインを造る予定は?との質問に

「No!!!」(←強く)
「I have to focus one thing!」
(私は一つのことに注力するべきなんだ!)

ときっぱりと否定されてしまいました。

自分は農家であり(とても農家には見えないほど洗練されていますが・・)
リオ・ネグロのテロワールを表現すること
ピュアな表現をし続けることに注力していきたい、とのことです。

イタリアでカベルネ主体のサッシカイアを造るファミリーとは
全くの別天地でピノ・ノワールを造り続けるピエロ氏。
今後の活躍がますます楽しみです♪





2015年11月5日木曜日

シャンパーニュ ルイ・ロデレールより副社長ミッシェル・ジャノー氏が来日!

先日、シャンパーニュメゾン、ルイ・ロデレールより
副社長のミッシェル・ジャノー氏が来日。
ショップでのイベントに加え、スタッフ向けのセミナーが行われました。




















↑いつもダンディなミッシェル・ジャノー氏。

ジャノー氏は、パリ大学で法律と経済の博士号を取得、
法律の助教授としてキャリアを始め、
その後、父親の経営するジャノー・アルマニャックの輸出部長として参画。
また、シーグラム社に買収されるまでコニャック大手のマーテルで会長を務め、
1999年よりルイ・ロデレール社に参画。
2001年からは副社長として渉外・広報を担当する。
2008年、レジオン・ドヌール勲章(シュヴァリエ)を受章。

とつらつらと書くととても華々しい経歴!
現在は特にマーケティングを中心に担当されているそうです。

ルイ・ロデレールのシャンパーニュ4種を試飲しながらお話を伺いました。
















ルイ・ロデレールは18世紀に創業し、
来年でちょうど240周年を迎えるという老舗メゾンで、
その間、ずっと家族経営を守り続けている稀有な造り手でもあります。

今回試飲した中でも特に印象的だったワインをご紹介します。
まずはこちらのブリュット・ヴィンテージ・ロゼ 2010年。


















ブリュット・ヴィンテージ・ロゼ 2010年 / ルイ・ロデレール
10,000円(10,800円 税込)

こちらのロゼの特徴は何と言っても
その淡く美しいサーモンピンク色の色合いと、
華やかだけでなく繊細かつ芳醇な香りにあります。
その独特の風味を生み出すのが、その製法。

多くのシャンパーニュメゾンが、通常のシャンパーニュに
赤ワインをブレンドすることでロゼシャンパーニュを造るのに対し、
ルイ・ロデレールでは、ピノ・ノワールをスキンコンタクトさせることで
この淡い独特の色合いを生み出します。

この製法は、色の抽出のタイミングが難しいのですが
やはり繊細な風味とコクは、スキンコンタクトならでは。
ジャノー氏も、

「特別な時に飲みたいのは、この製法で造られたロゼシャンパーニュ。
 恋人同士で飲むロマンティックな夜のシャンパーニュはこれ!」と力説していました。

赤系果実の華やかなアロマに
ほんのりとエキゾチックやチョコのアロマ。
複雑で芳醇な香りとコクはさすが!
とっておきのディナーに開けたい1本です♪


















クリスタル 2007年 / ルイ・ロデレール
28,000円(30,240円 税込)

そして、ロデレールが誇るプレスティージュ・キュヴェ
クリスタル。

ジャノー氏曰く

「これほどまでに余韻・波長のあるシャンパーニュはクリスタルだけ。」

とのこと。

何でも、社長、醸造責任者を含む数十人で、
他のメゾンのプレスティージュ・キュヴェとクリスタルを
ブラインドでテイスティングしたところ、ほぼ全員が
「これがクリスタルだ。」と銘柄を的中させたそうです。

樽の風味が強かったりと「醸造」による個性が強い
プレスティージュ・キュヴェも多い中、クリスタルの特徴は
「ブドウの良さがストレートに表現されている」点にあるそうです。

なるほど、ファーストインパクトは強くないですが、
非常に繊細できれいな余韻が長く長く続きます。

また、ルイ・ロデレール社が他の大手メゾンと異なる
もう一つの取り組みが「ビオディナミ」。
小規模生産者でビオディナミを取り入れている造り手は多いですが
大手のメゾンで取り組んでいるのは、ロデレールくらいではないでしょうか。














ビオディナミを取り入れることによって、
ブドウが「聞き分けの良い子供のように落ち着いてきた」そうです。

現在、クリスタルに使われるピノ・ノワールは100%ビオディナミ。
シャルドネはまだ100%ではありませんが、3年後には全てビオディナミになるそうです。


家族経営の老舗メゾンというと、
保守的なイメージがありますが、ルイ・ロデレール社は、
フィリップ・スタルクと共同で開発した「ブリュット・ナチュール」や
ビオディナミ栽培のように、他メゾンと比べてもかなり先鋭的な取り組みをしています。
しかも、それがコンセプト先行ではなく「品質重視」である点が
世界でも高く評価されている所以なのではないでしょうか。