2016年5月28日土曜日

新たなトレンド?! 「熟成」がコンセプトのチリワイン

「チリワインの垂直9ヴィンテージテイスティング」

垂直とは、同じ銘柄のワインを年代違いで飲み比べること。

「ボルドーやブルゴーニュワインならともかく、チリワインで!?」
と、ワイン好きの方ならびっくりしそうなテイスティングが
先日、アンダーズ東京で行われました。






















行われたのは、
「エスクード・ロホ スペシャルテイスティングセミナー」。

このような垂直テイスティングは初めての試み、ということで、
会場には、ソムリエ、バイヤー、ワインジャーナリストなど
ワインのプロフェッショナルが大勢来場されました。


エスクード・ロホは、
バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド・マイポ・チリが手掛けるトップキュヴェ。

バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド・マイポ・チリは、
フランス、ボルドーのシャトー・ムートン・ロスチャイルドを有する
バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドが
1979年にカリフォルニアで始めたオーパス・ワン
1997年にチリで始めたアルマヴィーヴァに続いて、
2003年に、チリのマイポ・ヴァレーに設立したワイナリーです。
















↑ 2003年に設立したバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド・マイポ・チリ
  写真右は、故バロネス・フィリピーヌ・ド・ロスチャイルド男爵夫人


「エスクード・ロホ」とは、スペイン語で「赤い盾」を意味し
これは「ロスチャイルド=赤い盾」と同義。
ロスチャイルド家の名を冠した、初のワインだったそうです。






















↑ワインの解説を行うエマニュエル・リフォー氏

今回セミナーでエスクード・ロホについて語ってくださったのは
バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド・マイポ・チリの社長兼ワインメーカーの
エマニュエル・リフォー氏。

フランス生まれのエマニュエル氏は、
ボルドーでワイン醸造学、土壌学を学んだ後、
シャトー・フェラン・セギュールでアシスタントワインメーカーを務め、
バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社に入社。

ムートン・カデやシャトー・ムートンのワイン造りに携わった後
2004年からチリでのワイン造りを担っています。


エスクード・ロホに使われるブドウが栽培されているのは、
主にマイポ・ヴァレー。
砂利が多い土壌は、フランスのボルドーやコート・ロティに似ており
そのためカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーといったブドウ品種が
植えられています。

エスクード・ロホは、ボルドーの伝統的なシャトーコンセプトで造られます。
シャトー・ムートンやアルマヴィーヴァと同様に、
ブドウは全て手摘み、10㎏の小さなバスケットに入れてワイナリーに運ばれ、
選果は「ダブルセレクション」。
除梗前に1度、さらに除梗後に1度、合計2回、人の手によって丁寧に行われます。



















ブドウは最新鋭の設備で醸造され、
さらに、ボルドー仕込みの洗練されたアッサンブラージュによって
ワインが完成します。



早速テイスティングが始まりました。
ワインは全てエスクード・ロホ。
2006年から最新の2014年まで、9ヴィンテージがずらり勢揃いしました。


















熟成によってやわらかく芳醇な味わいに変化していた2006年から
パワフルな2013年まで、全く異なる個性に驚きましたが、
特に印象的だった2つのヴィンテージをご紹介します。



















2008年 エスクード・ロホ・ヴィンテージ・コレクション
3,000円(3,240円 税込)


こちらは8年の熟成を経たボトル。
2008年のチリは、過去40年間で最も冷涼かつ乾燥した冬、
そして熱く乾燥した夏、という厳しい気候だったそうです。
ワインは例年以上にエレガントに仕上がっており、
果実の香りに加え、
清涼感のあるハーブのようなニュアンスが感じられます。

エマニュエルさん曰く

 「まるでボルドー・ポイヤックのワイン!」

確かに、とてもエレガントかつ優美な味わいは、
ボルドーワインと見まがうほど。

今まさに飲み頃を迎え始めた2008年。
チリワインにありがちな甘い果実味とは無縁の
クラシカルなボルドースタイルで、
チリワインが苦手なボルドーワインラヴァーにこそ
一度試していただきたい!そう思わせる1本でした。


もう一つが2012年。

















2012年 エスクード・ロホ
2,500 円 (2,700 円 税込)


カベルネ・ソーヴィニヨン39%、カルメネール35%、
シラー24%、カベルネ・フラン2%というブレンド。

2012年は非常に乾燥し、
地中海的な気候が大半を占めたヴィンテージ。
ブドウは理想的な成熟を迎えました。

こちらは2008年と違って
チリワインらしいパワフルな凝縮感があり、
甘いカシス、煮詰めたジャムやリコリス、
ハーブのニュアンスが感じられます。

味わいはとてもソフトでバランスが良く、
ボルドーワインを思わせるエレガンスが感じられるあたりはさすが。




















↑「スタイリッシュにお願いします!」というスタッフのリクエストに応えて、
 素敵なポーズをとってくださったエマニュエルさん

バロン・フィリップ社では、今後、
「熟成して楽しむチリワイン」というコンセプトをより強く打ち出していくそう。

昨年来日した、オーナーのフィリップ・ド・セレイ・ド・ロスチャイルド氏も、

 「熟成が我々の強み」

ということを強調していました。

長期熟成タイプのボルドー産グランヴァンを長年手がけてきた経験、
そして、豊富な資金力があるからこそ実践できるのが
「熟成」というコンセプトなのでしょう。

格安ワインからプレミアムワインまで、百花繚乱のチリワイン市場。
ロスチャイルド家がボルドーから持ち込んだ「熟成」というコンセプトは
チリワイン界に新たなトレンドを生み出すかもしれません。

2016年5月13日金曜日

本日はカクテルの日!ワインカクテルを楽しみませんか?

本日5月13日は「カクテルの日」。




















アメリカの新聞で初めて「カクテル」が定義されたのが1806年の5月13日。
その日を、日本のバーテンダー4団体が「カクテルの日」に制定しました。


実は昨年のブログでもワインカクテルをいくつかご紹介しました。

http://winetsushin.blogspot.jp/2015/05/513.html

今回も、これからの季節にぴったり!
爽やかなワインカクテルを新たにご紹介します。

その1 「パンプルムース」





















あまり馴染みのない名前ですが、
実はフランスで大ヒット中!というカクテルがこちら。

作り方は拍子抜けするほど簡単。
ロゼワインにピンクグレープフルーツジュースをお好みで注ぐだけ!
グレープフルーツの苦みとロゼワインの程よいコクが相まって
とても爽やかな味わいになります。

想像以上にドライに仕上がるので、食中酒にぴったり。
昼下がりのランチにパンプルムースなんて、最高です♪
甘めが好きな方は、シロップを加えても。

パンプルムースには、淡い色合いの辛口ロゼがおすすめです。
南仏産のドライなロゼなどいかがでしょうか?


















ロスタル・カーズ・ロゼ
1,800 円 (1,944 円 税込)



その2 「アメリカンレモネード」





















こちらはポピュラーなワインカクテルですね。

作り方は、赤ワインとレモネードを3:4位の割合で混ぜるだけ。
最初にグラスに氷とレモネードを注いでおいて、
マドラー伝いに赤ワインをそーっと注ぐと
写真のようなきれいなグラデーションができます。

レモンの酸味と苦み、そして赤ワインの渋みが心地良い
大人のカクテルです。

飲み残しの赤ワインとレモンがあれば是非お試しを!


その3 「サングリア」




















最近日本でもにわかにブームの兆しのあるサングリア。

赤ワインにオレンジやレモン、
リンゴといったフルーツを加える作り方が定番ですが、
今回はちょっと珍しいレシピをご紹介。

こちらは、お好みの白ワインに桃ジュースと
桃、ラズベリーを加えたちょっと贅沢なサングリア。
白ワインと桃ジュースは、1:2くらいの割合でブレンドします。

見た目がとっても華やかで、パーティーのスターターにぴったり。
優しい甘みにラズベリーの酸味がアクセントになって、
やみつきになりそうな味わいです♪


その4 「グリーン・ムートン・カデ」




















こちらは昨年ご紹介して好評だったカクテル。

ボルドーの白ワイン「ムートン・カデ・ソーヴィニヨン・ブラン」
を使ったオリジナルカクテルです。

こちらも作り方は簡単。
大きめのグラスに氷をたくさん入れ、
ムートン・カデ・ソーヴィニヨン・ブラン120mlに
ガムシロップ10mlを加えて軽くステア。
最後にスライスしたライムを添えます。

ソーヴィニヨン・ブランの柑橘類やハーブの香りに
ライムの爽快な香りが加わって
グラスから清涼感が溢れだします。
まさに初夏から夏にかけてのアペリティフにぴったり!
是非お試しを。


















ムートン・カデ・ソーヴィニヨン・ブラン
1,600 円 (1,728 円 税込)



2016年5月8日日曜日

訪れるべき世界のスパークリングワイン産地トップ5

長かったゴールデンウィークも本日で終わり。
すでに明日のことを考えて憂鬱・・という方も多いかもしれません。

そんな連休最終日には、
さっそく次の休暇の計画を考えて、気を紛らわせることにましょう(笑)

ということで、本日は、
イギリスのワイン専門誌『デキャンター』が発表した
「訪れるべきスパークリングワイン産地トップ5」
1位から3位までをご紹介します。


第1位
シャンパーニュ(フランス)















ルイ・ロデレールの畑



もちろん1位は言わずもがな「シャンパーニュ」ですね。

デキャンター誌は、

 「シャンパーニュには豊かな歴史があり、
  2015年にはユネスコの世界文化遺産に登録。
  地下に広がる巨大なセラーを、パリからたった4時間で目にすることができる。」

とコメント。

2015年にユネスコの世界文化遺産として登録されたシャンパーニュ地方。
特にランスに広がる歴史あるメゾンと、白亜質の土壌を切り開いて造られた
地下に広がるカーヴ群が、認定のポイントになりました。

















シャンパーニュ・バロン・ド・ロスチャイルドのカーヴ

ブドウ栽培地の北限に近いシャンパーニュ地方ですが、
そのハンデを逆手にとり、アッサンブラージュや動瓶、デコルジュマンなど、
技術と手間が必要なワイン造りの工程を積み重ねることで
他の産地には真似のできないワインを生み出すことに成功しました。

美しい景観に加え、
職人たちによるワイン造りの技術の粋が結晶した場所でもあり、
ワインラヴァーなら一度は訪れるべき価値がありそうです。

シャンパーニュツアーの詳細は、
デキャンターのトラベルガイドを参考に ↓
Decanter travel guide to Champagne.


第2位
プロセッコ(イタリア)














ビソルの畑。
 こちらはプロセッコのグラン・クリュと言われるカルティッツェの畑


近年人気急上昇中のスパークリングワイン、プロセッコ。
特に欧米では、消費量が爆発的に伸びているとか。

写真を見ておわかりの通り、
プロセッコは丘が連なる産地。

特に西に位置するヴァルドッビアーネに生産者が集中しており、
急峻な丘で栽培されたブドウから
高品質なプロセッコが生み出されています。

デキャンター誌は、

 「ヴェニスから近いので、歴史的な水上都市も一緒に訪れることをお忘れなく。」

とコメント。

なるほど!世界的な観光都市、ヴェネツィア観光が同時にできることも
プロセッコの大きな魅力の一つですね。

プロセッコツアーの詳細は、
デキャンターのトラベルガイドを参考に ↓
Prosecco tour and wineries to visit.


第3位
カヴァ(スペイン)















↑グラモナの畑 / Decanter.com より


日本でも高い人気を誇るスペインのカヴァが3位にランクイン。

デキャンター誌は、

 「スペインの太陽の元でスパークリングワインを飲みましょう。~中略~
  バルセロナに飛べば、歴史とアート、タパス、そしてナイトライフが楽しめます。」

とコメント。

冷涼なシャンパーニュ地方と違って
スペインの良さは何と言っても気候の良さ。
燦々と降り注ぐ太陽の元で楽しむカヴァとタパス。
想像するだけで素敵です。

カヴァツアーの詳細は、
マスター・オブ・ワインが選ぶトラベルガイドを参考に ↓
Sarah Jane Evans MW’s guide to best Cava wineries to visit


以上、皆さま行きたい産地はありましたか?

ワイン産地ツアーは、
おいしいワインが飲めることはもちろん、
周辺に素敵な観光スポットがあることも重要なポイント。

当たり前ですが、ワイン産地のメインは「畑」。
畑の他に遊べるスポットがないなんてこともしばしばですので。。

夏休みの旅行先の参考にしてみてはいかがでしょうか♪

2016年5月1日日曜日

“パリスの審判” でイギリス産スパークリングがシャンパーニュに勝利!

“パリスの審判”と聞けば
ワイン好きの方はピンとくる方も多いかもしれません。

これは、アカデミー・デュ・ヴァンの創始者が
パリで主催したブラインド・テイスティング。

当時まったく無名のカリフォルニアワインが、
シャトー・ムートンやオー・ブリオンといった
フランスワインを打ち破った、
ワイン界を揺るがした大きな事件でした。

実は、このパリスの審判が開催されたのは1976年5月24日。
今年で40周年を迎えました。

そんな記念すべき年に行われたのが、
シャンパーニュ VS 英国産スパークリングワインという
興味深いテイスティング。

イギリスのテレグラフ紙で、

「 イギリスのスパークリングワインが
 パリのブラインドテイスティングでシャンパーニュに勝利 」

という見出しで紹介されました。





















↑シャンパーニュに勝利した、イギリス産のスパークリングワイン
 「ナイティンバー・ブラン・ド・ブラン2009」
 ブラン・ド・ブラン部門で14人中9人の審査員が、 
 シャンパーニュ「ビルカール・サルモン ブラン・ド・ブラン」を上回る評価を下しました。


こちらのテイスティングは
英国のワイン&スピリッツ・トレード・アソシエーションが主催。
審査員には、フランスのレストランやバーから
ビックネームが名を連ね、
3部門中、2部門でイギリス勢が勝利。
残る1部門においては、シャンパーニュとタイという
イギリス勢の圧勝という結果に終わりました。

















↑イギリス ウェスト・サセックス州にあるナイティンバーの畑


実は、フランスより50年ほど早い17世紀の半ばから
スパークリングワインを生産していたといういイギリス。
(ただ、原料のブドウはシャンパーニュから運ばれたものだったそうです)

これまでシャンパーニュほどの名声を確立することはありませんでしたが、
ここ最近の地球温暖化により、
「ポスト・シャンパーニュ」として注目を浴びるようになりました。

実際、スパークリングワインが造られれているイギリスの産地の気温は
フランスのシャンパーニュ地方の数十年前の水準と同じになっているとか。
また、白亜質という特異な土壌条件もシャンパーニュと合致しています。

テレグラフ紙によると、
シャンパーニュの大手、テタンジェ社は、
イギリスのカンタベリー近くの田園地帯で
170エーカーの土地を購入したそうです。

また、同じようにポメリーも現地メーカーと共に
スパークリングワインをリリースする方針を発表。

大手シャンパーニュメゾンが造る
イギリス産スパークリングワインを目にする日も遠くなさそうです。


















このブラインドテイスティングにおいて、審査員の一人は

「イギリス産のスパークリングワインは、とてもフレッシュで、
 シャンパーニュよりずっとフルーティーだった。」

とコメント。

世界的なワインや食のトレンドが、よりライトな方向に向かっている今、
イギリス産スパークリングワインは、
重厚で他にはない複雑さが魅力のシャンパーニュに対して
また違ったアドバンテージがあるのかもしれません。

これからもますます目が離せない産地となりそうです。