2016年12月28日水曜日

ほろ酔い気分でページをめくりたい『文学とワイン』

2016年も残すところあと少し。
本日で仕事納めという方も多いのではないでしょうか。

本日は、冬休みの読書にも最適な本をご紹介します!

それがこちら↓






























文学とワイン / 山内 宏泰 
青幻舎
本体価格 1,800円 (1,944円税込)


こちらは、ワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー エノテカ・ミレで
開催してきた文学とワインを同時に楽しむイベント、
文学ワイン会「本の音 夜話(ほんのね やわ)」が、
書籍『文学とワイン』(青幻舎)として刊行されたもの。

文学ワイン会とは、毎回1人の作家の方をお招きし、
作家も参加者もともにワインを飲みつつのアットホームな雰囲気の中、
作家自らご著書について語っていただくトークイベントです。
























↑第1夜に登場する、西川美和さん


小説家たちがワイングラスを片手に語った、自身の小説観や創作への想いなど、
本音のトークがこの一冊にギュッと凝縮されています。

同時に、小説家たちが語るワインやお酒の魅力、
ワインやお酒が文学のなかで果たす役割など、
その新たな魅力を発見することもできる一冊です。

本書には、気鋭の作家たちによる、
ワインやお酒にまつわる名言も多数収録されています。



アートなんて、なくたって生きていける。<中略> 
小説も、ワインも、なくたって人は生きられる。 でも、あれば豊かにはなれて、
また不思議なことに人間は、より豊かになることを求める生きものなんですよね。
______原田マハ 

お酒を飲むと、行動や言動がヘンになるでしょう。 
それをそのままスケッチすると、もうひとつの世界みたいなものが生まれる。<中略>
そう考えると、酔っぱらいにはちょっと憧れます。魂が解放される感じがあって。
______穂村弘 


ワインを語る言葉に触れるのは、
読めない外国語の日本語訳を読んでいるときの感覚に似ています。
あきらめと憧れともどかしさ、それが全部ふくまれている。
______堀江敏幸 


~本書より抜粋~


























そして本書のもう一つの主役はワイン。

作家たちのリクエストや、
その小説のイメージに合わせてセレクトされたワインが次々と登場。
合計30種ものワインが、トークを盛り上げています。

例えば、ワインや日本酒が好きという島本理生さんのリクエスト。

「飲んだときに煙る感じと甘みが両方あって、
時間が経つにつれて味が複雑に変化する、重めの赤だとうれしいです」

との具体的なリクエストで選んだワインがこちら。

























◆小説『Red』のイメージに合わせて…
プリヴァーダ 2013年/ボデガ・ノートン
3,000円 (3,240円)


会場でもイメージにぴったり!とたいへん好評だったようです。



実際に作家たちが楽しんだワインを片手に本書やその小説を読めば、
さらに新たな世界が広がりそうです。

まさにワイン好き、文学好きのすべての方におすすめしたい本書。
ぜひ、グラス片手にほろ酔い気分でページをめくってみてください♪


本のご購入はこちら▼
https://www.enoteca.co.jp/item/detail/999973714000





2016年12月19日月曜日

二日酔い対策まで!ワインパーティーを楽しむコツ

忘年会、クリスマス・・パーティーシーズン真っ盛りですね!


















今回は、ワインショップ各店で配布している「エノテカ・タイムス11-12月号」の
「おうちでワインパーティー!」より、ワインパーティーのコツについて
いくつかご紹介します♪


























ワインは何本揃える?




















意外と知らない方が多いのが、ワイン1本でグラスどのくらいとれるかということ。

通常グラス1杯=約90~100ml ですので、
750mlボトル1本=7~8杯どり  と換算するのが一般的です。

ゲストの飲む量、パーティーの時間にもよりますが、
最低グラスで3杯、多くて1人1本を目安として考えましょう。

もちろん、あまり飲めない方、まったく飲まない方への配慮もお忘れなく。
当日急に「今日は飲めない!」というゲストが来ることも想定して
ノンアルコールのスパークリングワインなどを用意しておくと安心です。
オールドヴィンテージのワインは、澱を沈めるために飲む2~3日前から立てておきます。



ワインの温度


スパークリングワインやスッキリとした白ワインはしっかり冷蔵庫で冷やします。
ただふくよかな味わいの白ワインなどは、
冷蔵庫から出したては少し冷えすぎていると感じることも。
そんな場合は、クーラーに入れずに室温において徐々に温度を上げていきましょう。

赤ワインは軽い赤ワインだと13℃前後、
ミディアムボディで15℃前後、フルボディで18℃前後が理想的。
「赤ワインは室温で」と思っている方も多いようですが、
日本の家庭の室温はもっと高いため、
実際のワインの温度は、思っているよりも実はかなり高め。

15℃前後で保存できるワインセラーがあれば直前までセラーに入れておき、
ない場合は赤ワインでも冷蔵庫で少し冷やして、
できれば温度計でキッチリ計ってみるのがオススメです。



水はたっぷり飲む


















ワインの本場、フランスやイタリアのレストランでワインをオーダーした後に
よく聞かれるのが「ガス入り?スティル?」という水の種類。
現地ではほとんどの方が注文する水には、
アルコールを摂取することで失われる水分を補給することで、
悪酔いや水分不足を防ぐ効果があります。

ワインの帝王、ロバート・パーカー氏は毎日必ず2~4ℓの水を飲んでいるとか。
ワインパーティーのお供は水!鉄則です。



グラスの洗い方




















楽しいパーティーが終わった後のグラス洗浄。
もしかして当日洗っていませんか?
ワイン会の失敗談としてよく聞くのが
「酔っ払ってグラスを洗って割ってしまった・・」というもの。

グラスはさっとお湯ですすぐだけで大方の汚れはとれます。
酔っ払ってしまったときは、グラスにお湯を張っておいて、翌朝洗う。
スマートなワインラヴァーの常識です。

ただし、洗った直後にはすぐクロスで水滴を拭くのがポイント。
自然乾燥は水垢の原因になるので
「ワイングラスは洗ったらすぐ拭く!」を習慣にしましょう。



二日酔い対策


酒豪のエノテカ・スタッフやソムリエ達に
「二日酔いにならないにはどうしたらよいでしょう?」と質問すると
返ってくる答えが「ビタミンの摂取!」。

実はアルコールを消化する際に体内のビタミンが失われてしまうそうで、
それを補うことが二日酔い対策に必須なのだとか。

ワインを飲んだ後にビタミン剤を摂取する
(100%のグレープフルーツジュースを飲むだけ、というスタッフも。)ほか、
翌日にはバナナや柑橘類でビタミンチャージ!
(胃が荒れているときは、酸味のあるかんきつ類は控えた方がよいことも)

ワインパーティのお土産にビタミン剤とフルーツ、
なんて気が利いていていいかもしれません♪







ともあれ「美味しいワインを、ほどほどに楽しむ」
これがワインパーティーを楽しい思い出にする一番のコツです♪

皆さんも飲みすぎには注意して、どうぞ素敵なワインパーティーをお楽しみください!



▼パーティーにぴったりのワインいろいろ
 「ワイン好きのためのクリスマス特集」はこちら
https://www.enoteca.co.jp/xmas/index.html




2016年12月5日月曜日

ミニマリズムを追及するシャンパーニュトップメゾン来日!

今年のシャンパーニュ&スパークリングワイン世界選手権にて
生産者として最高賞「プロデューサー・オブ・ザ・イヤー」と、
クリスタル2002年(マグナムボトル)が、「シュープリーム・ワールドチャンピオン」
「ベスト・フレンチ・スパークリング」をW受賞!という快挙に輝いた、
今最も注目のシャンパーニュメゾン、ルイ・ロデレール。

先月、副社長 兼 シェフ・ド・カーヴ(栽培・醸造責任者)を務める
ジャン・バティスト・レカイヨン氏が初来日!
スタッフ向けにセミナーが行われました。





↑ジャン・バティスト・レカイヨン氏
栽培と醸造、さらには副社長として経営に携わるスーパーワインメーカーです。


ルイ・ロデレールに入社して28年目というレカイヨン氏。
フランス国立農学学院の醸造と栽培両部門を首席で卒業。
その才能をルイ・ロデレールの先代ジャン・クロード・ルゾー社長に見初められ、
同社に入社しました。

“天才醸造家”と呼ばれる所以はもちろん
ワインメーカーとしての優秀さにありますが
彼のすごいところは、シャンパーニュだけでなく、
南仏のプロヴァンス、ボルドー、カリフォルニアのワイン造りも統括していることに加え、
家族経営の会社としては珍しく、創業家ではないワインメーカーながら
副社長として経営にも加わっていること。


75%以上という高い自社畑比率を誇るルイ・ロデレール社。
長期的な視点で畑の手入れを行い、良質なブドウを手に入れなければ
良質なシャンパーニュは生まれません。

オーナーがそのことを深く理解しているからこそ、
創業家ではないワインメーカーを副社長に抜擢する、
という決断ができたのかもしれません。























早速試飲したワインをいくつかご紹介します。

























ブリュット・プルミエ

こちらはルイ・ロデレールのスタンダード・キュヴェであり
名刺代わりの1本。

レカイヨン氏が「ノン・ヴィンテージと呼ぶにはもったいない!」と話すように
その7割以上が単一のヴィンテージ・キュヴェで造られています。
そしてこのスタンダード・キュヴェのすごいところが
熟成ポテンシャルを持ち合わせていること。

通常ノンヴィンテージのシャンパーニュを寝かせて飲むことはありませんが、
このブリュット・プルミエは、2~3年セラーで寝かせると、
フィネス、ミネラルなど、ヴィンテージの個性がどんどん出てくるとか。

ケースで買っておいて、少しずつ熟成による変化を楽しむ「通」もいるそうです。


























ブリュット・ナチュール・フィリップ・スタルクモデル

こちらは2006年のファーストリリースに続く最新作の2009年度産。

ノン・ドサージュで限りなくナチュラルに造られるキュヴェですが、
レカイヨン氏によるともう一つ大きなコンセプトが。

このキュヴェに使われるブドウは全て粘土質土壌の畑のもの。
粘土質土壌から生まれるブドウは「スケールの大きな果実味が特徴的」で、
ブドウがよく熟したヴィンテージという点が大切とのことでした。

2009年は、まさにブリュット・ナチュールにとって理想的なヴィンテージ。
限りなくナチュラルに造るため、収穫のタイミングも
ビオディナミカレンダーに沿って行います。

味わいはノンドサージュとは思えないほど、丸みがありリッチ。
後味にうっすらと塩味のようなミネラルを感じます。
“限りなくピュア”という使い古された表現が
これほどぴったりくるワインはそうないのでは、と思わせる1本です。

ワイン単体で楽しむもよし、
レカイヨン氏曰く、シーフードと合わせるのもおすすめだそうです。


























クリスタル 2009年

こちらはルイ・ロデレールが誇るプレスティージュ・キュヴェ。
2002年のクリスタルは、今年行われたスパークリングワイン世界選手権にて
「シュープリーム・ワールド・チャンピオン」
「ベスト・フレンチ・スパークリングワイン」の2冠を達成した、
まさに世界のスパークリングワインの頂点と言っても過言ではないキュヴェです。

このクリスタルには、ブリュット・ナチュールとは対照的に、
石灰質土壌で育ったブドウだけを使っています。

石灰質土壌から生まれるブドウの特徴は
「パワーと凝縮感、長期熟成のポテンシャル、そしてフィネスとエレガンス」
それらを最大限に表現したのがこのクリスタルなのです。

ルイ・ロデレールでは、古くから自社畑に自生したピノ・ノワールを
マサル・セレクションで接ぎ木してきたため、
200種以上のクローンが存在しており、その多様性こそが
クリスタルの個性を形づくっているそうです。





今回のセミナーにおいて改めてわかったのは、
ルイ・ロデレールが目指すスタイルが“ミニマリズム”であること。
レカイヨン氏が何度も“ミニマリズム”という言葉を使っているのが印象的でした。
ミニマリズムとはアートやファッションの世界でよく使われる言葉で、
直訳すると「最小限主義」ですが、無駄や装飾を排除した究極のシンプルさ、
と解釈されることが多いようです。

ワインの中でも、人の手で造りこまれたゴージャスなイメージのあるシャンパーニュ。
そのトップメゾンが「ミニマリズムを追及したい。」とは少し衝撃的です。

具体的にどのようにして追及しているかというと、
レカイヨン氏曰く「スタイルは重要ではない。土地に由来することが重要。」

つまりは、テロワールをピュアに表現することを追及しているのです。
そのために、1950~60年代の、化学肥料を使用していなかった時代に回帰しようと、
なるべく自然のままにブドウが育つよう、ビオディナミ栽培をはじめ
畑の手入れに力を注いでいるそうです。

また、ルイ・ロデレールでは、
ほとんどのキュヴェでマロラクティック発酵を行いません。
マロラクティック発酵を行うと、シャルドネを使ったキュヴェなどに
「バターの風味」が付くこと(若いときにそういった香りが出るのは好みではないそうです)
また、熟成が早く進んでしまうことから、マロラクティック発酵を行わないそうです。






















シャンパーニュ地方で最大のビオディナミ栽培者であるルイ・ロデレール。
現在はトップキュヴェであるクリスタルのビオディナミ栽培比率は50%強ですが
2020年には100%になる予定です。

シャンパーニュ界のトップメゾンが目指す「ミニマリズム」。

余計なものを排しても、力強い輝きを失わないのは、
その土台にあるものが揺るぎないからに違いありません。





2016年11月15日火曜日

シャトー・ムートン・ロスチャイルドの最新アートラベル発表!

ムートンファンの皆様、お待たせしました。

待望の2014年のアートラベルが発表されました!

それがこちら↓↓





























2013年は李禹煥(リ・ウーファン)氏による
とてもミニマムなデザインでしたが(→昨年の記事はこちら)
今回は何ともポップな印象です。

このラベルを手掛けたのは、
イギリスを代表する画家、デイヴィッド・ホックニー氏。




















↑デイヴィッド・ホックニー氏 ※シャトー・ムートン・ロスチャイルド公式HPより


デイヴィッド・ホックニー氏は1937年イギリス生まれ。
その才能は早くから注目を集め、
ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業時には金賞を受賞。

卒業後にすぐにアメリカのポップアート運動に参加し、
ホッパーやアンディ・ウォーホルと出会います。
その後はカリフォルニア大学バークレー校で教鞭をとりながら、
ロサンゼルスを拠点に活躍しました。

その作品は、特にポートレートを得意とし、
ゴッホをほうふつとさせる燃え立つような色彩と、
クラシカルで緻密なタッチが特徴的とされています。

























↑フィリピーヌ・ド・ロスチャイルド男爵夫人


実は、ホックニー氏は、
2014年に亡くなったフィリピーヌ・ド・ロスチャイルド男爵夫人と
個人的に親交を深めていた友人でした。

この2014年のラベルに描かれたデッサンには、
夫人へのオマージュとして描かれた放射状に広がるペアグラス、
グランヴァンへの期待、そして絶頂を迎えるまで、永遠に繰り返される物語・・
満たされたグラスと空のグラスで、
絶え間なく偉大なワインが生まれる奇跡と、
夫人が長年にわたり主役を演じたムートンの物語が表現されています。


今回のラベルは、フィリピーヌ夫人が選考に関わった最後のもの。

来年のリリースが楽しみですね。

2016年11月12日土曜日

今年の出来は?ボジョレー・ヌーヴォー2016年最新情報


いよいよ来月、11月17日(木)の解禁が迫ったボジョレー・ヌーヴォー。
気になる今年2016年の出来はどうだったのでしょうか?
フランスから届いた最新の作柄情報をご紹介いたします!



















↑クリュ・ボジョレーのスペシャリスト、アンリ・フェッシの畑




エレガントで魅惑的なワイン 



まずは、10月14日に発表されたボジョレワイン委員会のプレスリリースをご紹介。


「春の悪天候に対し、夏は期待通りぶどうの成熟に理想的な天候だった。
 収穫前の数週間は暑く乾燥していたため、ぶどう樹、
 造り手の双方につかの間の休息の時間をもたらした。
 ぶどうは成熟が遅れたことで、夜間は気温が下がり日中は太陽に恵まれ
 気温が高いという環境にさらされ、
 それによって収穫時までに理想的な熟度に達することができた。
 そして、とても良いヴィンテージを予想させる心地よい爽やかさも維持している。


 収穫の期間は晴天に恵まれた。まるで自然からの、(春の悪天候に対する)
 お詫びのしるしであるかのような好天のインディアンサマー(小春日和)で、
 収穫されたぶどうの品質から判断しても、自然は太陽を出し惜しみしなかったようだ。」
 


そしてボジョレーの栽培・醸造研究所幹部のベルトラン・シャトレ氏は


 「2016 年は力強いというよりもエレガントで、酸と果実味、
  ストラクチュアとのバ ランス、そして爽やかさと味わい深さとのバランスがすばらしい」


とコメントしてます。
※2016 年10 月14 日付 ボジョレワイン委員会プレスリリースより抜粋




















↑アンリ・フェッシの醸造責任者、ローラン・シュヴァリエ




ワイナリーを満たすほどの際立ったアロマ


ボジョレー地区で9つのクリュ・ボジョレーを所有する
“クリュ・ボジョレーのスペシャリスト”アンリ・フェッシからも最新のレポートが届いています。


 「今年の9月以降の天候は、非常に暖かく恵まれたものとなり、
  素晴らしい天候のもとで収穫作業が行われました。
  9月単月の降雨量はほぼゼロであり、日中の平均気温は高く、
  夜間は涼しいという理想的な天候が続いたことで
    ワイン畑に最高のコンディションをもたらし、
  ぶどうは完璧な熟成を遂げることができました。
 
  春の湿り気のあった天候にもかかわらず、夏の天候に恵まれたことで
  本年のぶどうは完熟を果たすことができました。
  一部で危惧されていた収穫量も適正なボリュームで、昨年よりも多く確保できました。
  ぶどうの素晴らしい色調、ストロベリーやブラックチェリーを思わせる、
  ワイナリーを満たすほどの際立ったアロマは今年のヴィンテージが高品質であることを
  確信させるものでした。」/醸造責任者 ローラン・シュヴァリエ







春先に約15%ほどの生産者が雹によるダメージを受け、
決して楽なヴィンテージではなかったボジョレー地方。


ただ、その後は日照量の多い夏と、収穫期の雨がほぼゼロという好天に恵まれ、
結果的には満足のいく出来のワインが生まれたようです。


いよいよ解禁まであと少し。
ボジョレー・ヌーヴォーを飲んで、
今年のフランスワインの出来を占ってみてはいかがでしょうか♪


▼完売間近の商品も!2016年ボジョレー・ヌーヴォー特集はこちら▼


https://www.enoteca.co.jp/2016BJN/index.html






















2016年10月30日日曜日

“完璧主義”のシャトー・ラトゥール支配人、フレデリック・アンジェラ氏来日!


先日、シャトー・ラトゥールの支配人兼社長であり、
ブルゴーニュのドメーヌ・デュージェニー、ローヌのシャトー・グリエ、
カリフォルニアのアイズリー・ヴィンヤード(旧アローホ・エステート)を統括する、
フレデリック・アンジェラ氏が来日。

プロフェッショナル向けにマスタークラスが開催されました。

















↑10月23日 帝国ホテルにて開催された「アルテミス・ドメーヌ マスタークラス」


フレデリック・アンジェラ氏が勤めているのは、
ボルドー、ブルゴーニュ、ローヌ、カリフォルニア・・
ワインの銘醸地に錚々たるワイナリーを所有する
「アルテミス・ドメーヌ」。

フランスの億万長者として知られる、
フランソワ・ピノー氏が設立したグループです。
アルテミス・ドメーヌの傘下にあるのは、
グッチ、ボッテガ・ヴェネタ、サンローランといったブランドを展開するケリング、
そして世界最古の名門オークションハウスであるクリスティーズ等々・・
一流のブランドだけを所有するグループを見れば、
錚々たるワイナリーもなるほどと思うラインナップです。

アートの蒐集家として、また大のワイン好きとして知られるピノー氏。
(アートに関しては今月発売された英アート・レビュー誌で、
世界で最もアート界に影響のある人物と発表されたほど)
彼はワイン造りについて、
「これはビジネスではなくパッション!」と表現しているそうで、
一流ブランド、そしてアートを見極める際と同じ審美眼で、
世界中の宝石のようなワイナリーを手にしてきたと言います。

さて、マスタークラスでは、アルテミス・ドメーヌが手掛ける
4つのワイナリーから多くのワインを紹介されましたが
その中でも、フレデリック・アンジェラ氏が支配人を務める
シャトー・ラトゥールについて、ご紹介します。























↑フレデリック・アンジェラ氏。アルテミス・ドメーヌのワインを前に。


五大シャトーの中でも孤高の存在であるシャトー・ラトゥール。
「孤高」たらしめているには数々の逸話があります。

一つは、その圧倒的な品質はもとより、
2012年を最後に、格付けのシャトーとして初めてプリムール販売を廃止。
全ての生産量をシャトーでキープし、
飲み頃になった時点でリリースするという方針に方向転換し
ボルドーワイン界に一石を投じたこと。

「樽で熟成中のワインを現金化して資金を確保する」
という側面をもつプリムールシステム。
また、ボルドーの仲介人の反発は必至という状況で
全てのワインをシャトーで熟成させるという決断には、多くの犠牲を伴ったようです。
フレデリック氏曰く、

「メッセージはクリアだ。飲み頃になったワインだけをお客様に紹介したい。」

ただどれだけ資金力があるグループと言えども、
これを続けていくのは大変なことのようで、
「古いヴィンテージのワインを売りながら、続けていきたい。」
とフレデリック氏は語っていました。

さらに最近では格付け1級シャトーとして初めてビオディナミ栽培を開始。
品質をストイックに追い求める姿勢に注目が集まっています。

さて、今回試飲したのは、
サードワインであるポイヤック・ド・ラトゥールにはじまり
セカンドのレ・フォール・ド・ラトゥール、最後にシャトー・ラトゥール。

特に印象的だったワインをご紹介します。

レ・フォール・ド・ラトゥール


















2009年 レ・フォール・ド・ラトゥール
 
 
フレデリック氏はこのワインを紹介する際、
 
「どうしても、このワインをセカンドと呼ぶのを躊躇してしまう。」
 
と一言。
 
元々格付け第1級シャトーのセカンドワインの中でも
卓越した品質に高い評価を得ていたレ・フォール・ド・ラトゥールですが
その品質には、近年さらに磨きがかかっているそうです。
 
このレ・フォール・ド・ラトゥールに使用するブドウは
かつては若木でしたが、すでにその樹齢も4~50年に達し、
若木どころか、すでに古樹の部類に入り始めています。
 
それに加え、1993年にピノ―家がシャトーを手に入れた後
買い足した20haの新しい区画のブドウの品質が大変高く、
このブドウをブレンドすることによって、
レ・フォール・ド・ラトゥールの品質はさらに高まったとか。
 
2009年は、フレデリック氏曰く「とてもエネルギーがある。」
「少しナパのワインのような印象もある」と表現するように、
圧倒的な果実のアロマと凝縮感に思わず言葉を失ってしまうほど。
 
 「品質だけをみれば、格付け2級に相当するレベルだと考えています。」
 
とフレデリック氏が話すように、
その味わいは、セカンドの域を完全に超えています。
 

シャトー・ラトゥール
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

難しい気候だったと言われるボルドーの2007年。
シャトー・ラトゥールも例外なく日照不足に悩まされたそうですが、
 
「難しい年にこそ、偉大な“ランクロ”のテロワールを感じることができる。」
 
とフレデリック氏。
 
熟したフルーツの繊細なアロマ。
タンニンは大変きめ細かくしっとりと落ち着いており、
今年に入って「飲み頃」と判断されシャトーからリリースされたことからも伺えるように、
まさに飲み頃を迎えつつある1本です。














 
 
 
その緻密なワイン造りに“完璧主義”と評されるフレデリック・アンジェラ氏。
現在はシャトー・ラトゥールだけでなく、
ブルゴーニュとローヌ、さらにはカリフォルニアでもワイン造りを統括しています。
 
「これだけ様々な地域でワイン造りをマネジメントするのは難しいのでは?」
 
と質問されると、
 
「とてもよいチーム、そして信頼できるメンバーがいるからそれが可能になるのです。
 大切なのは、同じボキャブラリーをもつこと。時には冗談を言って彼らを励ますことも。
 私は彼らをアシストしているだけです。」
 
との答え。
 
マスタークラスの会場では、
日本を代表するソムリエ、ワインジャーナリストを前に
 
「質問は?」 「他に質問は?」 「質問はそれだけ?」
 
と、とにかくすごい勢いでワインに関する質問や感想を求めていました。(笑)
 
そしてどんな質問にも即答、そして滑らかに答える姿が印象的でした。

「孤高の完璧主義者」といシャトー・ラトゥールの
イメージを体現したかのように見えるフレデリック氏。
 
しかし会場で垣間見えたのは、チームと同じ言葉で話し、
ディスカッションによってワインを造り上げているであろう、
“熱い”ワインメーカーの姿でした。
 
 
 

2016年10月24日月曜日

NZシレーニのチーフワインメーカーが日本で必ず食べるもの

先日、ニュージーランドのシレーニ社より、
チーフワインメーカーのグラント・エドモンズ氏が来日。
インタビューに答えていただきました。





















↑シレーニのチーフワインメーカーで、Mr.メルロことグラント・エドモンズ氏。

近年世界的に人気が高まっているニュージーランドワイン。
今年のレポートでは、輸出量は前年比10%増。
特にアメリカやイギリス、北欧など欧米諸国での需要が
数字を牽引しているそうです。

世界各国で和食のブームなど、ライトな食事のトレンドはしばらく続いており、
旧世界にはない豊かな果実味と、
旧世界らしい繊細さ備えたニュージーランドワインは、
まだまだ世界を席巻しそうです。


グラントさんのワイン歴はとてもユニーク。
約28年前、バックパックを背負って世界中を旅していた時に
フランス、イタリアといったヨーロッパ各国を来訪。
その時に「ファンタスティックな」料理とワインを口にし、ワイン造りに興味をもちます。

帰国後は、ニュージーランドでも古くから続く名門ワイナリーヴィラ・マリアに就職。
ワインメーカーとして活躍しながら、
オーストラリアやボルドーでもワイン造りを経験します。

世界各国でのワイン修行の後、念願叶って小さなワイナリーを立ち上げたころ、
「新しいワイナリーをつくるから、一緒にワインを造らないか」と声をかけてきたのが
シレーニ・エステートの創業者であり社長のグレアム・エヴリー氏。




















↑シレーニの創業者であり、社長であるグレアム・エヴリー氏。

医学書の販売で財を成したグレアム氏は、
実は、ヴィラ・マリアの顧客だったそうで、
そこでワインメーカーを務めていたグラント氏を見出したそうです。

そんな2人がホークス・ベイの中でもワイン造りに最適な土地を捜し、
ブドウを植えたのが1997年。ここからシレーニ・エステートの歴史が始まりました。

ホークス・ベイは「ニュージーランドのフルーツボウル」と呼ばれる産地。
年間の降雨量や気温はボルドーやブルゴーニュに良く似ており、
ソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワールが植えられている
冷涼なマルボロに比べると平均気温は高く、
厚みのある味わいのメルロやシャルドネといったブドウ品種が
成功している産地でもあります。

現在でこそ多くのワイナリーが進出しているホークス・ベイですが、
シレーニを立ち上げた当時は、辺り一面牧場で、いるのは羊ばかり。
ワイン畑は一つもなかったとか。





















↑こちらは2016年現在のホークス・ベイにあるシレーニの畑。
 広大な土地にブドウ畑が広がっています。

そんな場所を、グレアム氏とグラント氏は少しずつ開拓して
ワイナリーを大きくしていきました。
シレーニ・エステートは、まさにホークス・ベイのパイオニアと言えます。

シレーニのワインと言えば、ソーヴィニヨン・ブランが知られていますが、
実は、ホークス・ベイに拠点をもつシレーニの真骨頂は、
シャルドネとメルロにあります。
特にメルロは、Mr.メルロことグラント氏渾身の1本。



















↑セラー・セレクション・メルロ / シレーニ 
 
 
世界中でワイン造りを学んだグラント氏の
ボルドーの修行先は、サンテミリオンのトップシャトーの一つ、シャトー・パヴィ。
厚い泥の層が砂利質を覆うというホークス・ベイの土壌が、
ボルドーの右岸の土壌に良く似ていたことからメルロを植え始めたそうです。

Mr.メルロと呼ばれるグラントさんには、
来日時にエノテカのスタッフから必ずされる質問があります。
それが

 「お好み焼きはもう食べましたか?」(笑)

2001年の初来日以来、数えきれないほど来日しているグラントさん。
実は日本のお好み焼きが大好きだそうで、
来日すると必ず食べているとか。


















このお好み焼きに合うのは、
何と言ってもシレーニのセラー・セレクション・メルロ。

お好み焼きの甘辛いソースの風味が、
よく熟したチェリーやプラムのアロマとなめらかな果実味をもつ
やさしい味わいのセラー・セレクション・メルロとマッチします。

エノテカのスタッフがニュージーランドを訪れた際には、
現地でワイナリーの皆さんにお好み焼きを振る舞って大好評だったとか。

お寿司や天ぷらにニュージーランド産のソーヴィニヨン・ブランは鉄板ですが、
現地のチーフワインメーカーも太鼓判を押すお好み焼きとの組み合わせも、
ぜひ一度試してみてはいかがでしょう♪

2016年10月9日日曜日

スペインの名門トーレス社の次期当主が来日!

スペイン・カタルーニャで創業したスペインワイン界の名門、トーレス社より、
現当主4代目ミゲル・A・トーレス氏のご子息であり、
5代目として将来のトーレスを担うと言われるミゲル・トーレス・マクサセク氏が来日。
エノテカのインタビューに答えていただきました。






















↑ミゲル・トーレス・マクサセク氏
物腰はとっても穏やかで、まるでロイヤルファミリーのようなオーラがありました。

1979年、トーレス社が他のワイナリーに先駆けて
チリに進出したことは知られていますが、
これを進めたのが彼の父である現当主のミゲル・トーレス氏。

ステンレスタンクや小樽の導入といった革新的な取り組みで
チリワイン全体の品質向上を牽引しました。

こちらの5代目ミゲル・トーレス・マクサセク氏は2009年からチリに在住し、
フェアトレード、オーガニック栽培、伝統品種パイスの復活など
新しいプロジェクトを実現させてきました。(⇒詳しい記事はこちら)
現在はスペインに戻り、トーレス社全体を統括されています。

トーレス社は、2014年、2015年と2年連続で
「世界で最も尊敬されるワイナリー」に選ばれていますが
その背景には、地球環境や伝統品種への熱心な取り組みがあります。
特に近年力を入れているのが地球温暖化対策で
膨大な研究開発費を、この地球温暖化対策に注いでいるそうです。

 「自然の恩恵を受けるワイナリーの責任です。」

と語るトーレス氏。地球環境に配慮したワイナリーづくりを押し進めており

 「これはまだ夢ですが、近い未来に最終的には100%自家発電で運営できる
  サスティナブルなワイナリーを完成させたい。」

と、熱心にその取り組みを語ってくださいました。

最後に、ご自身の代で一番取り組みたいことは?
と尋ねるとこんな答えが返ってきました。

 「やはり、プレミアムワインを造りたい。」
 「我々はワインメーカー。どの世代でもより良いワインを造る必要がある。」

実は、新しい土地を購入して、
未来のアイコンワインを生み出すプロジェクトが進んでいるとか。

そのために家族の協力は不可欠で、
同じくワインメーカーの姉、ミレイア・トーレスさんや、
叔母であり、カリフォルニアでワイン造りを行っているマリマー・トーレスさんとは、
いつもお気に入りのワインを持ち寄って「どこがフェイバリットなのか」
と、日々意見交換をしているそうです。



















↑ミゲル・トーレス・マクサセク氏と、 
姉でありジャン・レオンのマネージング・ディレクターおよび、
トーレス社の研究施設に勤務するミレイア・トーレスさん。

そこで、ミゲル・トーレス・マクサセク氏のフェイバリットワインは?と質問すると

 「マス・ラ・プラナ。ハイクオリティなだけでなく、革新的なワインだから。」

との答え。





















マス・ラ・プラナ 2010  750ml
スペイン産カベルネ・ソーヴィニヨンの単一畑で生み出される
トトーレスのフラッグシップ。ファーストヴィンテージである
グラン・コロナス・ブラックラベル(現マス・ラ・プラナ)1970年が、
パリ ワイン・オリンピックで、メドック格付け第1級シャトー・ラトゥールなど
トップシャトーを抑えカベルネ・ソーヴィニヨン部門で見事優勝。
これによりトーレス社はトップワイナリーの地位を確立した、
同社の記念碑的ワインです。


終始穏やかに語るマクサセク氏でしたが、
「プレミアムワインを造る。」と答えた時、
内に秘めた大きな野心が少しだけ垣間見えた気がしました。

5代目が造る、マス・ラ・プラナに続くトーレスの新たなプレミアムワイン、誕生が楽しみです。

2016年9月23日金曜日

文学ワイン会「本の音 夜話(ほんのね やわ)」           映画監督・西川美和さん登場!


先日、第10回文学ワイン会「本の音 夜話」が
ワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー・エノテカ・ミレで開催され、
映画監督・小説家の西川美和さんにゲストでお越しいただきました!
 
 

















ナビゲーターの山内宏泰さんより、お酒がお好きだと紹介された西川美和さん。
まずはアンティノリが造るシャルドネ100%のワイン、ブラミートを片手に、
西川さんによる乾杯のご発声で会がスタートしました。

西川さんの作品では、お酒を飲む場面が時々見られます。
この秋ご自身により映画化される『永い言い訳』では、
妻を事故で亡くした幸夫が、同じ事故で亡くなった妻の親友の遺族と
麻布十番のビストロで食事をするシーンがあります。
そのテーブルにちらりと映っているのがブルゴーニュワイン。

 「主人公の衣笠幸夫(きぬがささちお)はすごい売れっ子小説家という設定です。
お酒などの文化にも造詣が深いことになっているので、
そういう人が飲むのはこういうもので、行きつけはこういう店であろうと。
私は詳しくないので、撮影させていただいたお店のソムリエさん方に
相談しながら決めました。」

ワンシーンのワインひとつについても、
そこに出てくるのがどういうワインであるべきなのかが詰められており、
そうした細部は映画作りにとって非常に大事なのだそうです。
そして『永い言い訳』では、ワインが印象的に出てくるシーンがもう一度あります。

「トラック運転手のお父さんが1000円ぐらいのチリワインをコンビニで買ってくるのですが、
幸夫はそれを十分美味しいと感じます。
もともと1万円前後のワインを平気で開けるような設定の主人公。
それこそワインにも一家言あるような人物なのですが、
妻の親友家族の生活に出入りするようになり、子どもたちと出会ったりするなかで、
幸夫くんがワイン好きだからと、相手のお父さんが手さぐりで買ってきたワインを
意外と旨いものだな、と主人公が感じるのです。」

幸夫自身の状況や周囲との関係の変化が、言葉ではなく、
どんなワインを飲むかということで表現されています。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

人公の幸夫は、人間の弱い部分や欠点を寄せ集めたような人物ですが、
西川さんがこれまで生み出したキャラクターの中で一番自分自身に近いとのこと。

「みんなとの違和感を感じたり、いま泣くべきところでうまく泣けなかったり。
そういう部分は自分にも多分にあります。
あと、物を書く人間独特の虚実がない混ぜになって、
バランスが悪くなっている部分なんかは自分の職業を反映したところがあります。
幸夫もチヤホヤされている小説家という設定ですが、
中身を開けば子どもっぽいパーソナリティー。
そういう部分は本当に自分に似せて書いています。」
 

西川監督による、小説と映画の表現方法の違いについてのお話は、
改めて、映画を撮ることの大変さと、その表現の深さに気づかされることがたくさん。
ワンシーンごとに、様々な意味や意図が凝縮されていることが実感できるお話でした。


 
最後のQ&Aのコーナーでは、お客様からの熱心が質問がいっぱい!
たくさんの質問にひとつひとつ丁寧に答えていただきました。
とくにあるお客様からの質問、
「創作の核となるものをひとことで表現するとどんなことになりますか?」
へのお答えが心に残りました。


「私の師匠である映画監督の是枝裕和さんは、自分の創作の核はルサンチマンだ。
お前もだろ? な?と言われました。
是枝さんの作品を観るとそんな印象はないですが、
実は批評性や批判精神があるんですよね。
私は、今は怒りとかそういうものではないんですが、
今回も書いたような誰にも言えない苦々しい別れとか、
世間の陽のあたらないところの感情など、
大きな声で言えないことを書いていきたい、と思っています。」


お話をしていただきながら、「美味しい!」と、たびたびグラスを傾けられていた西川さん。
西川さんと共にワインを楽しみながら、 小説と映画という創作の世界や、
映画作りへの深い想いを窺うことができた、 大変充実した会となりました!  
 
 




















◆『永い言い訳』に併せて当日ご提供したワイン
モンテス・アルファ・カベルネ・ソーヴィニヨン
2013 赤 税込2,376

 

映画『永い言い訳』
1014日(金)全国ロードショー
C2016「永い言い訳」製作委員会
配給:アスミックエース 
 
 

 







2016年9月18日日曜日

シャトー・マルゴーのアンバサダー、ティボー・ポンタリエ氏が来日!

ボルドーの格付け第1級シャトー、マルゴーより
アンバサダーを務めるティボー・ポンタリエ氏が来日。

先週、ワインショップエノテカ広尾本店で行われた
テイスティングの模様をお伝えします。


















ティボー氏は、今年春に逝去された前支配人、ポール・ポンタリエ氏のご子息。
以前より香港に住んでシャトー・マルゴーのアンバサダーを務めていましたが
ポール氏が亡くなられてからは、ボルドーとアジアを行き来しているそうです。





















↑ティボー・ポンタリエ氏。若干30歳という若きアンバサダーです。



今回テイスティングしたのはこちらの6種類↓


















まず、ウェルカムワインとして供されたのは、
シャトー・マルゴーが造る唯一の白ワイン、パヴィヨン・ブラン・デュ・シャトー・マルゴー。
ソーヴィニヨン・ブラン100%で仕立てられる珍しい1本です。

 「世界中には、ロワールやチリ、ニュージーランドといった
  ソーヴィニヨン・ブランの銘醸地がたくさんあるけれど、
  ボルドーのソーヴィニヨン・ブランは本当にユニーク!」

とティボー氏。

この白ワインの歴史は大変古く、
19世紀には「ソーヴィニヨン・ブランの白ワイン」として販売されていたとか。
本国フランスと日本で大変人気があるというパヴィヨン・ブラン。
生産量は約12,000本と、赤ワインの1/10に満たない希少さ。

アプリコットなど核系フルーツの熟した香りに、
塩味すら感じる強いミネラル。とてもリッチで驚くほど奥行きのある味わい。
ティボー氏曰く、この日テイスティングした2010年は、向こう30年の熟成が可能とのこと。
そのとてつもない余韻の長さに、
ボルドー・ブランを代表する1本であると改めて確信しました。

















続いて、サードの「マルゴー・デュ・シャトー・マルゴー」
「パヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴー」
最後に「シャトー・マルゴー」が登場しました。

注目は2004年のシャトー・マルゴー。

ティボー氏曰く、

 「良年と言われる2003年、2005年に隠れているけれど、
  今飲んで美味しい、非常に喜びを与えてくれるヴィンテージ。」

シャトー・マルゴーに特徴的なフローラルの香りに加え、
カシスやブルーベリーなどの果実、チョコレートの香り。
口当たりは柔らかく、フィネスが感じられる上品な余韻が印象的です。

















2015年にはセラーをリニューアルしたシャトー・マルゴ―。
区画別の醸造に対応する小型発酵槽をはじめ、
最新設備を完備したセラーに生まれ変わりました。
小型発酵槽の充実によって、精度の高い醸造、アッサンブラージュが可能になったそうです。


今回、ティボー氏がシャトー・マルゴーについて語っていた中で
特に印象的だったエピソードが、サードワインに関するもの。

2012年にリリースされ、瞬く間に市場を席巻したサードワイン
「マルゴー・デュ・シャトー・マルゴー」。
実は1999年から造っていましたが、正式にリリースしたのは12年後である2012年だったそう。
さらには、マルゴー・デュ・シャトー・マルゴーの品質を保つために
ひっそりと“フォース・ワイン”まで造っているそうです。

最高の品質を保つためには一切の妥協をしない
シャトー・マルゴーの姿勢が感じられるエピソードでした。

シャトー・マルゴーは、2015年の「ワイン・オブ・ザ・ヴィンテージ」に選出。
これは、高級ワインの取引サイトLiv-exのメンバー440社が評価したもので、
シャトー・マルゴーは過半数を獲得するという圧倒的なトップだったとか。

ますます輝きを増すシャトー・マルゴーから目が離せません。


▼今回の来日に合わせて、シャトー蔵出しバックヴィンテージが勢揃い▼
    シャトー・マルゴーの特集はこちら↓
http://www.enoteca.co.jp/item/list?_label=MR


2016年9月5日月曜日

アマゾンのランキングで1位を獲得したワインガイド

最近発売されたワインのヴィジュアルガイドブック、
『The WINE ワインを愛する人のスタンダード&テイスティングガイド』
が売れているそうです。

amazonランキングの「Wine Buying Guide部門」にて
1位を獲得(2016年6/23調べ)。
アメリカでは発売から1ヵ月を待たずに8万部刷、
本場フランス、イタリアをはじめ19ヵ国で発売されているとか。


















The WINE ワインを愛する人のスタンダード&テイスティングガイド
/ マデリーン・パケット(著)、ジャスティン・ハマック(著) 日本文芸社 本体1,800円+税

著書は、アメリカの国際的ソムリエ教育機関「コート・オブ・マスター・ソムリエ」
の資格をもつ女性のソムリエ、マデリン・パケットさん。
ウェブサイトwinefolly.comのコンテンツ作りを行うほか、
ワインの解説書や、ソムリエが集まるプロの団体「ギルド・オブ・ソムリエ」
などに関わっているという方です。

「ワイン・フォリー」winefolly.comは、エノテカのスタッフの間でも
ずいぶん前から話題になっていたワイン情報サイト。
カラーのイラストのわかりやすい図解で示される
ワインの味わいやテイスティングの仕組みが非常にわかりやすく、
なぜこんな図解がこれまでなかったのか!と目からうろこでした。

このサイトは、多くの人の支持を得て、
2013年にはインターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティションにて
ワイン/スピリッツ部門のブロガー賞を受賞しています。

さて、そんな注目の女性が手掛ける本書。



















こちらは「ワインと食材組み合わせ」の章。
一目で食材に合うワインがわかる、とっても便利な図です。


多くのワイン解説書が、ワインを産地で分け、
それぞれの国の法律で等級づけられた主要な格付けワインを解説するのに対し、
(まずフランスのボルドーの格付けシャトー、
 そして次はブルゴーニュのグラン・クリュというように)
本書は、ワインのタイプやブドウの品種ごとに
その味わいが把握できるようになっています。

ですから、最初にワインの基本が来た後にくるのは
産地ではなく「ワインの9つの種類を知る」という章。

スパークリングワイン、ライトボディの白ワイン、フルボディの赤ワイン
といったカテゴリーごとに、代表的なブドウ品種が示され、
それぞれの香りや味わいの特徴が一目でわかるようグラフ化されています。

さすが、グレープ・ヴァラエタル表示が主流のアメリカらしい視点ですね。

ワインの味わいをロジカルに、体系的に学びたい!という方にはとてもおすすめ。
このチャートを頭にいれておけば、何となく行っているテイスティングが
より実りあるものになりそうです。

ちなみに、フランス発のワインの教科書も売れているようで、
こちらは「ホームパーティーでワインを楽しむ」という章から始まる
フランス人らしいガイド本です。(笑)
こちらも過去のブログで紹介していますので、併せてどうぞ。

http://winetsushin.blogspot.jp/2016/01/blog-post.html

2016年8月9日火曜日

作家・堀江敏幸さん登場!文学ワイン会「本の音 夜話(ほんのね やわ)」

先日、第9回文学ワイン会「本の音 夜話」が
ワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー・エノテカ・ミレで開催され、
作家の堀江敏幸さんにゲストでお越しいただきました!





















ナビゲーターの山内宏泰さんから、
ワインが似合う作家、として紹介された堀江敏幸さん。
ですが、堀江さんは「お酒は飲まないです」ときっぱり。
「この話をいただいたときに、これは明らかにおかしいと(笑)
 酔っぱらった人の中で話をするのはまったく抵抗がありません。
 皆さん今日はどんどん飲んでいただければと思います」
との御挨拶で会がスタートしました。

1杯目にサービスしたワインはシャブリ。
最新長編小説『その姿の消し方』の章のひとつ、
「発火石の味」からイメージしてお出ししたもの。
火打石、発火石の香りは、シャブリに特徴的であると言われています。




















◆シャブリ / ダニエル・ダンプ2014 白 税込3,240円


 「「発火石の味」はワイン用語ですが、
 僕は昭和のガキだったので、石なんかよく齧ったわけですよ。
 それこそ、ライターの石とか小石とかいろんなものを齧ったんです。
 ちょっと舐めてみたりとか。
 だから僕はワインより先に発火石の味を知っているわけです。」

ワインの味を知らなくても、ワインの形容やテイスティングの言葉を知っていれば、
味わいの追体験をしたような気持ちになれるそう。

「文芸用語や批評で用いられるような言葉のストックがあって、
 言葉そのものを信用しても味に近づける感じがします。
 ワインを説明する形容だけ見ていても楽しいですよね。
 そこに味が伴わないと浮いた言葉になるというのはわかるんですけど、
 分解酵素の少ない人間にとっては仕方がない。
 読めない外国語の日本語訳を読んでいるときのような、
 あきらめと憧れともどかしさ、それが全部ワインに対してあるんです。」
















ワインから、堀江さんのご著書に登場する美味しそうな料理の話に続き、
フランス留学時代、学生食堂の入り口に山積みにされていたバゲットを
留学生仲間と食べた思い出の話に。
たまたま重なり合ったそのときの状況によって、
硬くなったパンながらとても美味しく、
忘れられない思い出の味となったお話をしていただきました。
 「思い出や記憶をもとに作品を書かれるんでしょうか?」
との山内さんの問いに、

 「実際じゃないものを作って書くことも当然あるでしょうし、
 実際のものを書いても、そのとおりに書けたためしがない。
 後から思い出しながら書くというのは創作なんですね。
 だから書くことはすべて後追いの虚構になるんです。
 モデルがあるなしはまったく関係ない。文字の上では存在しているわけで。
 文字にするということの面白さと怖さは、そこにあると思います。」















そして、「転ぶ」ということにこだわりを持っている堀江さん。
転びやすいという事実と、転ぶという言葉についての思い、両方があるそうです。

 「気をつけているんですけど、本当によく転ぶんです。
 何か信念を持ってなければ、いつでも転ぶんじゃないかという恐怖があるわけです。
 これだけ転ぶ以上はなにか隙があるにちがいない。
 誰かにそこに突かれたら、簡単に寝返ってしまうんじゃないか。
 そうならないようにひとつのことを長く続けるとかですね、
 転ばぬ先の、じゃないけど、そうしたい気持ちはあります。」

最後のQ&Aでは、質問用紙にびっしりしたためた、熱のこもった質問がたくさん!
長編小説『その姿の消し方』を書くきっかけについても質問が出ました。
読み切りの雑誌に短編を書いた際、
ページを文字でぎっしり埋めると読みづらいことから、
詩を入れ、空白を作ることを考えたのだそうです。

 「空白があれば比較的気持ちが楽になると思い、詩を入れようと思いました。
 翻訳詩を3篇載せたんですが、何かの度にその空白が頭をよぎるんです。
 空白の前後にある空気とは、一種の磁場のようなものですね。
 時間が経つうちに、その磁場の中から
 消し得ない記憶が、言葉になってあらわれる。
 その言葉をめぐって書くことにしました。
 それが繋がっていき、6~7年かけてひとつの形になった作品です。」

子どもの頃やフランス留学時のエピソードなど、
ユーモアを交えつつ率直に語られるお話に、会場からは何度も笑いがこぼれました。

堀江さんはお酒ではなく、場や人の気配、
お酒を飲んだ人が醸し出す雰囲気などに酔うことがあるそうですが、
この日はまさにワインだけでなく、
堀江さんのお話が醸し出す和やかで豊かな時間と、
作品だけでは知り得ないユーモアにあふれた優しいお人柄に
酔いしれたひとときとなりました。















『その姿の消し方』(新潮社)
定価1500円+税
最新長編小説。
古い絵葉書に綴られていたアンドレ・ルーシェという
無名の詩人の痕跡を「私」がたどる物語。