2016年9月23日金曜日

文学ワイン会「本の音 夜話(ほんのね やわ)」           映画監督・西川美和さん登場!


先日、第10回文学ワイン会「本の音 夜話」が
ワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー・エノテカ・ミレで開催され、
映画監督・小説家の西川美和さんにゲストでお越しいただきました!
 
 

















ナビゲーターの山内宏泰さんより、お酒がお好きだと紹介された西川美和さん。
まずはアンティノリが造るシャルドネ100%のワイン、ブラミートを片手に、
西川さんによる乾杯のご発声で会がスタートしました。

西川さんの作品では、お酒を飲む場面が時々見られます。
この秋ご自身により映画化される『永い言い訳』では、
妻を事故で亡くした幸夫が、同じ事故で亡くなった妻の親友の遺族と
麻布十番のビストロで食事をするシーンがあります。
そのテーブルにちらりと映っているのがブルゴーニュワイン。

 「主人公の衣笠幸夫(きぬがささちお)はすごい売れっ子小説家という設定です。
お酒などの文化にも造詣が深いことになっているので、
そういう人が飲むのはこういうもので、行きつけはこういう店であろうと。
私は詳しくないので、撮影させていただいたお店のソムリエさん方に
相談しながら決めました。」

ワンシーンのワインひとつについても、
そこに出てくるのがどういうワインであるべきなのかが詰められており、
そうした細部は映画作りにとって非常に大事なのだそうです。
そして『永い言い訳』では、ワインが印象的に出てくるシーンがもう一度あります。

「トラック運転手のお父さんが1000円ぐらいのチリワインをコンビニで買ってくるのですが、
幸夫はそれを十分美味しいと感じます。
もともと1万円前後のワインを平気で開けるような設定の主人公。
それこそワインにも一家言あるような人物なのですが、
妻の親友家族の生活に出入りするようになり、子どもたちと出会ったりするなかで、
幸夫くんがワイン好きだからと、相手のお父さんが手さぐりで買ってきたワインを
意外と旨いものだな、と主人公が感じるのです。」

幸夫自身の状況や周囲との関係の変化が、言葉ではなく、
どんなワインを飲むかということで表現されています。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

人公の幸夫は、人間の弱い部分や欠点を寄せ集めたような人物ですが、
西川さんがこれまで生み出したキャラクターの中で一番自分自身に近いとのこと。

「みんなとの違和感を感じたり、いま泣くべきところでうまく泣けなかったり。
そういう部分は自分にも多分にあります。
あと、物を書く人間独特の虚実がない混ぜになって、
バランスが悪くなっている部分なんかは自分の職業を反映したところがあります。
幸夫もチヤホヤされている小説家という設定ですが、
中身を開けば子どもっぽいパーソナリティー。
そういう部分は本当に自分に似せて書いています。」
 

西川監督による、小説と映画の表現方法の違いについてのお話は、
改めて、映画を撮ることの大変さと、その表現の深さに気づかされることがたくさん。
ワンシーンごとに、様々な意味や意図が凝縮されていることが実感できるお話でした。


 
最後のQ&Aのコーナーでは、お客様からの熱心が質問がいっぱい!
たくさんの質問にひとつひとつ丁寧に答えていただきました。
とくにあるお客様からの質問、
「創作の核となるものをひとことで表現するとどんなことになりますか?」
へのお答えが心に残りました。


「私の師匠である映画監督の是枝裕和さんは、自分の創作の核はルサンチマンだ。
お前もだろ? な?と言われました。
是枝さんの作品を観るとそんな印象はないですが、
実は批評性や批判精神があるんですよね。
私は、今は怒りとかそういうものではないんですが、
今回も書いたような誰にも言えない苦々しい別れとか、
世間の陽のあたらないところの感情など、
大きな声で言えないことを書いていきたい、と思っています。」


お話をしていただきながら、「美味しい!」と、たびたびグラスを傾けられていた西川さん。
西川さんと共にワインを楽しみながら、 小説と映画という創作の世界や、
映画作りへの深い想いを窺うことができた、 大変充実した会となりました!  
 
 




















◆『永い言い訳』に併せて当日ご提供したワイン
モンテス・アルファ・カベルネ・ソーヴィニヨン
2013 赤 税込2,376

 

映画『永い言い訳』
1014日(金)全国ロードショー
C2016「永い言い訳」製作委員会
配給:アスミックエース 
 
 

 







2016年9月18日日曜日

シャトー・マルゴーのアンバサダー、ティボー・ポンタリエ氏が来日!

ボルドーの格付け第1級シャトー、マルゴーより
アンバサダーを務めるティボー・ポンタリエ氏が来日。

先週、ワインショップエノテカ広尾本店で行われた
テイスティングの模様をお伝えします。


















ティボー氏は、今年春に逝去された前支配人、ポール・ポンタリエ氏のご子息。
以前より香港に住んでシャトー・マルゴーのアンバサダーを務めていましたが
ポール氏が亡くなられてからは、ボルドーとアジアを行き来しているそうです。





















↑ティボー・ポンタリエ氏。若干30歳という若きアンバサダーです。



今回テイスティングしたのはこちらの6種類↓


















まず、ウェルカムワインとして供されたのは、
シャトー・マルゴーが造る唯一の白ワイン、パヴィヨン・ブラン・デュ・シャトー・マルゴー。
ソーヴィニヨン・ブラン100%で仕立てられる珍しい1本です。

 「世界中には、ロワールやチリ、ニュージーランドといった
  ソーヴィニヨン・ブランの銘醸地がたくさんあるけれど、
  ボルドーのソーヴィニヨン・ブランは本当にユニーク!」

とティボー氏。

この白ワインの歴史は大変古く、
19世紀には「ソーヴィニヨン・ブランの白ワイン」として販売されていたとか。
本国フランスと日本で大変人気があるというパヴィヨン・ブラン。
生産量は約12,000本と、赤ワインの1/10に満たない希少さ。

アプリコットなど核系フルーツの熟した香りに、
塩味すら感じる強いミネラル。とてもリッチで驚くほど奥行きのある味わい。
ティボー氏曰く、この日テイスティングした2010年は、向こう30年の熟成が可能とのこと。
そのとてつもない余韻の長さに、
ボルドー・ブランを代表する1本であると改めて確信しました。

















続いて、サードの「マルゴー・デュ・シャトー・マルゴー」
「パヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴー」
最後に「シャトー・マルゴー」が登場しました。

注目は2004年のシャトー・マルゴー。

ティボー氏曰く、

 「良年と言われる2003年、2005年に隠れているけれど、
  今飲んで美味しい、非常に喜びを与えてくれるヴィンテージ。」

シャトー・マルゴーに特徴的なフローラルの香りに加え、
カシスやブルーベリーなどの果実、チョコレートの香り。
口当たりは柔らかく、フィネスが感じられる上品な余韻が印象的です。

















2015年にはセラーをリニューアルしたシャトー・マルゴ―。
区画別の醸造に対応する小型発酵槽をはじめ、
最新設備を完備したセラーに生まれ変わりました。
小型発酵槽の充実によって、精度の高い醸造、アッサンブラージュが可能になったそうです。


今回、ティボー氏がシャトー・マルゴーについて語っていた中で
特に印象的だったエピソードが、サードワインに関するもの。

2012年にリリースされ、瞬く間に市場を席巻したサードワイン
「マルゴー・デュ・シャトー・マルゴー」。
実は1999年から造っていましたが、正式にリリースしたのは12年後である2012年だったそう。
さらには、マルゴー・デュ・シャトー・マルゴーの品質を保つために
ひっそりと“フォース・ワイン”まで造っているそうです。

最高の品質を保つためには一切の妥協をしない
シャトー・マルゴーの姿勢が感じられるエピソードでした。

シャトー・マルゴーは、2015年の「ワイン・オブ・ザ・ヴィンテージ」に選出。
これは、高級ワインの取引サイトLiv-exのメンバー440社が評価したもので、
シャトー・マルゴーは過半数を獲得するという圧倒的なトップだったとか。

ますます輝きを増すシャトー・マルゴーから目が離せません。


▼今回の来日に合わせて、シャトー蔵出しバックヴィンテージが勢揃い▼
    シャトー・マルゴーの特集はこちら↓
http://www.enoteca.co.jp/item/list?_label=MR


2016年9月5日月曜日

アマゾンのランキングで1位を獲得したワインガイド

最近発売されたワインのヴィジュアルガイドブック、
『The WINE ワインを愛する人のスタンダード&テイスティングガイド』
が売れているそうです。

amazonランキングの「Wine Buying Guide部門」にて
1位を獲得(2016年6/23調べ)。
アメリカでは発売から1ヵ月を待たずに8万部刷、
本場フランス、イタリアをはじめ19ヵ国で発売されているとか。


















The WINE ワインを愛する人のスタンダード&テイスティングガイド
/ マデリーン・パケット(著)、ジャスティン・ハマック(著) 日本文芸社 本体1,800円+税

著書は、アメリカの国際的ソムリエ教育機関「コート・オブ・マスター・ソムリエ」
の資格をもつ女性のソムリエ、マデリン・パケットさん。
ウェブサイトwinefolly.comのコンテンツ作りを行うほか、
ワインの解説書や、ソムリエが集まるプロの団体「ギルド・オブ・ソムリエ」
などに関わっているという方です。

「ワイン・フォリー」winefolly.comは、エノテカのスタッフの間でも
ずいぶん前から話題になっていたワイン情報サイト。
カラーのイラストのわかりやすい図解で示される
ワインの味わいやテイスティングの仕組みが非常にわかりやすく、
なぜこんな図解がこれまでなかったのか!と目からうろこでした。

このサイトは、多くの人の支持を得て、
2013年にはインターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティションにて
ワイン/スピリッツ部門のブロガー賞を受賞しています。

さて、そんな注目の女性が手掛ける本書。



















こちらは「ワインと食材組み合わせ」の章。
一目で食材に合うワインがわかる、とっても便利な図です。


多くのワイン解説書が、ワインを産地で分け、
それぞれの国の法律で等級づけられた主要な格付けワインを解説するのに対し、
(まずフランスのボルドーの格付けシャトー、
 そして次はブルゴーニュのグラン・クリュというように)
本書は、ワインのタイプやブドウの品種ごとに
その味わいが把握できるようになっています。

ですから、最初にワインの基本が来た後にくるのは
産地ではなく「ワインの9つの種類を知る」という章。

スパークリングワイン、ライトボディの白ワイン、フルボディの赤ワイン
といったカテゴリーごとに、代表的なブドウ品種が示され、
それぞれの香りや味わいの特徴が一目でわかるようグラフ化されています。

さすが、グレープ・ヴァラエタル表示が主流のアメリカらしい視点ですね。

ワインの味わいをロジカルに、体系的に学びたい!という方にはとてもおすすめ。
このチャートを頭にいれておけば、何となく行っているテイスティングが
より実りあるものになりそうです。

ちなみに、フランス発のワインの教科書も売れているようで、
こちらは「ホームパーティーでワインを楽しむ」という章から始まる
フランス人らしいガイド本です。(笑)
こちらも過去のブログで紹介していますので、併せてどうぞ。

http://winetsushin.blogspot.jp/2016/01/blog-post.html