2016年2月28日日曜日

注目!アメリカ西海岸の冷涼地から生み出されるピノ・ノワール。

カリフォルニア屈指のワイナリー、ケンダル・ジャクソンや、
ラ・クレマ、カーメル・ロードをはじめ、
世界に約40ものワイナリーを所有するジャクソン・ファミリー・ワインズ。
先日、ラ・クレマのワインメーカー、クレイグ・マカリスターさんと、
カーメル・ロードのワインメーカー、クリス・カトウさん、
そしてケンダル・ジャクソンのアンバサダーであり、マスター・ソムリエの
マイケル・ジョーダンさんが来日されました。
















 
 
↑左から、マスター・ソムリエのマイケル・ジョーダンさん、
 ラ・クレマのワインメーカー、クレイグ・マカリスターさん、
 カーメル・ロードのワインメーカー、クリス・カトウさん

ラ・クレマもカーメル・ロードも、
どちらもブルゴーニュ品種に特化したワイナリー。
ラ・クレマはロシアン・リヴァ―・ヴァレーを拠点にソノマ・コースト、
オレゴンのウィラメット・ヴァレーなどで、
カーメル・ロードはモントレーを拠点として、
それぞれ西海岸の冷涼な地でピノ・ノワールを造っています。

マスター・ソムリエのジョーダンさん曰く、
「アメリカは、フランスに次ぐ世界第2位のピノ・ノワール生産国。
アメリカのマーケットではピノ・ノワールは拡大傾向にあり、
生産量も増えています」とのこと。
そうした背景のもと、ラ・クレマやカーメル・ロードでは、
ブルゴーニュに似たピノ・ノワールに最適な土壌をどんどん探していったそうです。

そのようにピノ・ノワールの適地を探し当て、2012年から栽培を始めたのが、
オレゴン州最北部にあるウィラメット・ヴァレーです。
“西のブルゴーニュ”、さらには“ブルゴーニュのアメリカの妹”
などと称されるウィラメット・ヴァレー。
ブルゴーニュのコート・ドールと同様、北緯45°に位置しています。
カリフォルニアよりもさらに冷涼な気候のため、日中でも収穫が可能。
選果と除梗をしっかりと行って、
いかにワインの味わいで青さが出ないようにするかが、ポイントなのだとか。

その南となるカリフォルニアのロシアン・リヴァ―・ヴァレーは
毎晩霧が出る気候で、フランス・ブルゴーニュよりも多いと言われる多様性のある土壌が強み。
ソノマ・コーストはロシアン・リヴァ―・ヴァレーとまったくスタイルが異なり、
赤系果実の味わいとより軽やかな味わいが特徴的です。
こうしたそれぞれの地の条件を生かして、ラ・クレマでは
アメリカワインの常識を覆す、
気品を持ったブルゴーニュスタイルのピノ・ノワールが造られています。
一方、カーメル・ロードが拠点とするモントレーでは、
土っぽいミネラル感に支えられた味わいのピノ・ノワールが造られます。


























いずれも厳選された海岸沿いの冷涼な土地で造られるピノ・ノワール。

北から南へとピノ・ノワールの西海岸産地飲み比べができるのも、
ラ・クレマやカーメル・ロードならでは、です。


















ちなみに、ジャクソン・ファミリー・ワインズで大切にしているのが、
サスティナビリティ(持続可能性)への取り組み。
土地への思いが深く、土地を“借りている”という認識から、
可能な限りケミカルなものは使用せず、
自然由来のものを使ってワイン造りを行っているのが特徴です。

それぞれのロケーションにマッチしたクローンを使用し、ブドウは手摘み。
ブルゴーニュ的なスタイルを踏襲しながらも、モダンな施設で醸造し、
繊細なピノ・ノワールの特長をこわさないよう、ワイン造りも常に繊細に行われます。

ピノ・ノワールと言えばブルゴーニュ、というのも今は昔。アメリカ西海岸の冷涼な地で造られるすばらしいピノ・ノワールたちを
ぜひお試しください!

 

2016年2月21日日曜日

フランスを抜いて、ついに国別輸入量No.1! チリワイン

20161月財務省の貿易統計にて、
チリワインの輸入量がフランスを抜いてNo.1となりました。

2007年に日本とチリの経済連携協定(ERA)が締結され
関税が段階的に引き下げられたことに加え、
生産者の努力によって品質はどんどん向上。
輸入量もこの10年間でなんと6倍もの成長を遂げました。

今回の輸入量増加をけん引したのは
1,000円以下の安価なチリワインと言われていますが、
チリワインがここまでの人気を誇るようになった背景には
チリで本格的なプレミアムワインを生み出そうと努力してきた生産者たちがいます。





チリは、1818年にスペインから独立した後、
1800年台半ばごろには、本格的なワイン造りを開始しました。
国内消費中心だったワインが輸出されるようになったのは、
ヨーロッパなどの諸外国から資本が入るようになってから。

その先駆的な存在が、
1979年、スペインのトーレスが設立したミゲル・トーレス・チリ。
トーレスは、ステンレスタンクやフレンチオーク熟成をチリに持ち込み
多くの醸造所がこれに倣ったといわれています。
















↑いち早くチリに進出したスペインのミゲル・トーレス・チリ


1988年にはチリの軍事政権が終わりを迎え、民主化によって
ボルドーのシャトー・ラフィット・ロスチャイルドをはじめ 
さらに多くの海外資本が流れ込むようになりました。

こうした海外勢に、国内の生産者たちも奮起しはじめます。
90年代初頭には、日本をはじめすでに世界的にブームとなっていたチリワインですが
まだまだ「安くておいしい」というイメージから抜け出せずにいました。
1990年代後半に入ると、一部の生産者たちによるプレミアムワインが興隆し始めます。

その先駆けともいえるのが、
1996年にリリースされたウルトラプレミアムワイン
「モンテス・アルファ・エム」と「アルマヴィーヴァ」。
















モンテス・アルファ・エム 
11,000円(11,880円 税込) 現在品切れ中



















アルマヴィーヴァ 2013年
17,000円(18,360円 税込)


1988年に、チリ人だけによって設立されたモンテス社。
一方で、アルマヴィーヴァは、
チリで最大手のコンチャ・イ・トロ社と、
フランス・ボルドーのシャトー・ムートン・ロスチャイルド社の
ジョイント・ヴェンチャーとして誕生しました。

両者によるウルトラ・プレミアムワインの誕生は
積極的に欧州ワイナリーの進出を受け入れながら
その最新技術を取り込んで発展を遂げてきたチリワインの
一つの到達点ともいえる、象徴的な出来事でした。

このうしたウルトラプレミアムワインは
ヨーロッパのグラン・ヴァンに匹敵する高い評価を獲得。

チリワインのイメージを刷新したことに加え、
スタンダードクラスの品質の底上げにも貢献しました。
























チリワインの強みは、こうした最新技術による品質向上に加え、
ヨーロッパ全土を襲ったフィロセキラに侵されていない
樹齢100年を超す純粋な古樹が多い点や、
病害駆除のための農薬がほとんど必要ないという、
ブドウの樹そのものののポテンシャルの高さや、
環境面での利も改めて見直されています。

さらに、最近では一時は廃れていた伝統品種パイスを使ったワインや
スパークリングワインの人気も高まっているとか。
冷涼な気候をもつ海岸部への進出も目立ちます。
こういった地域では、ピノノワールやシャルドネ、
ソーヴィニヨン・ブランといった品種が成功を収めています。

輸入量だけでなく、様々な面で
ヨーロッパの伝統産地を凌駕する存在になりつつありそうなチリ。
今後も目が離せません。


▼チリワインの特集はこちら▼
http://www.enoteca.co.jp/CHILE/index.html


2016年2月14日日曜日

追悼 「スーパータスカンの父」ジャコモ・タキス氏

ティニャネロ、サッシカイア、ソライア
このイタリアの3つの偉大なイタリアワインの共通点、
それは、生みの親が同じということ。

この3つのワインを誕生させたことから
「スーパータスカンの父」と呼ばれ、
イタリアワインに計り知れない影響を与えた人物
ジャコモ・タキス氏が2月6日、82歳で亡くなりました。



















↑今から約40年前。ティニャネロをリリースした頃の
 アンティノリ現当主、ピエロ・アンティノリ氏(左)とジャコモ・タキス氏(右)
 /アンティノリ社公式FBより

1933年、ピエモンテで生まれたタキス氏は、
アルバでブドウ醸造学を学んだ後、ピエロ・アンティノリ氏の父である
ニコラ氏に雇われてそのキャリアをスタート。
ピエロ氏がワイナリー経営に参画し始めた1966年頃から
2人は共にワインの改革に乗り出します。

当時のトスカーナ地方のサンジョヴェーゼは、不遇の時代と言われ
低密度の植樹や、不衛生な木樽の使用によって品質は低迷していました。

そんな中、タキス氏は「現代ボルドーの父」と呼ばれた
ボルドー大学のエミール・ぺイノー教授に注目。
ぺイノー氏を何とか説得し、トスカーナに招いてコンサルタントを依頼することで
最新のブドウの栽培方法、醸造方法を得ることに成功したのです。
また、当時は一般的だったサンジョヴェーゼへの白ブドウのブレンドを排除し、
新樽の使用を取り入れたのもこの時期。

ぺイノー氏との交流と通じて、
国際品種の使用、高密度の植樹、新樽の使用といった
今では常識となっている取り組みをイタリアワイン界にもたらしたのです。

こうして1971年に生まれたのが「ティニャネロ」。
ティニャネロを生み出して世間を驚かせたアンティノリ社では
約30年間に渡りコンサルタントを務めました。























アンティノリは、彼の死について語っています。

「彼はトスカーナワインだけでなく、イタリアワイン全体において
 本当に大きな改革の手助けをした。彼の死は大きな損失だが、
 彼の仕事は未来に生き続けることが救いだ。」
 /ワインスペクテーター 2016.2.8

娘と孫に先立たれたタキス氏は後輩の育成にも大変熱心だったそうです。
これからもジャコモ・タキス氏のDNAは、
多くのワインに受け継がれ、進化していくことでしょう。



2016年2月7日日曜日

ブルゴーニュで活躍する日本人醸造家、ルー・デュモンの仲田さん来日!

先日、ブルゴーニュのネゴシアン、
ルー・デュモンよりオーナーであり醸造家である仲田さんが来日。
エノテカのオフィスに来てくださいました。

仲田さんは大学時代にワインに開眼し、
1995年に単身渡仏。
2000年にはニュイ・サン・ジョルジュにワイナリーを設立し
その後の活躍は目覚ましい、知る人ぞ知る日本人醸造家。


 
 
 
↑仲田晃司さん
 
異国で、しかも本場フランスでワインを造るだけでも
苦労が容易に想像できるというのに、
たった数年でワイナリーを造って
世界で称賛されるようになるなんて、すごい行動力の持ち主。
 
さぞかしパワフルな方だろう勝手に想像していたのですが、、
実際にお会いすると、とってもやわらかな物腰の方。
 
オフィスに入るなりスタッフ30名が一斉に歓迎すると
「恥ずかしい~」とおっしゃって顔を隠してしまう(笑)
その謙虚な姿勢にこちらが恐縮するほどでした。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
色々とお話をする中で、
これまであまり知られていなかったこだわりがわかりました。
 
まず、ルー・デュモンでは買い取るブドウについて、
以下の厳しい条件を課しているそうです。
 
・樹齢が30年以上のブドウの樹であること
・防腐剤は使用していないこと
 
また、原則ほぼ全てのワインはブドウのまま買い取っており
(ムルソーだけ、醸造所への移送に時間がかかるため
 現地でジュースにしてから運ぶそう)
 
しかもその70%は、ブドウの摘み取りから
選果までを、ルー・デュモンのスタッフが行っているそうです。
もはやネゴシアンとは呼べないほどのこだわり!
 
そして取引している80~85%の生産者は
10年以上という長いお付き合いのある
方達ばかりだそうです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
↑ルー・デュモンのスタッフたち
 
 
また、2008年には念願の自社畑を
ジュヴレ・シャンベルタンに購入。
1haの自社畑でブドウを栽培しており、
2013年からはビオに移行しているそうです。
現在はまだ生産量が少なく、オレンジのネゴシアンラベルに
ブレンドすることも多いとのこと。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ブルゴーニュ地方では
近年の生産量の少なさと人気の高まりから
畑の購入だけでなく、ネゴシアン業での新規参入も
大変難しい状況だそう。
 
そんな中で、
着実にリリースするワインを増やし続けている仲田さん。

「なんのコネもない中でどうして取引を広げることができたのですか?」

と質問したところ、

「一番は、ポテンシャルのある畑の所有者を見つけて、
いい年も悪い年も毎年根気よくブドウを買い続けることが大切。」

と答えてくれました。
もちろん、お人よしの所有者ばかりではありません。
大手ネゴシアンが高い買取価格を提示すれば、
そちらに流れてしまうこともあります。
 
それでも長い付き合いの中で信頼関係を築いていけば
強力なパートナーシップが結べます。
 
インタビューでは、スタッフも驚く
ブドウの売買の細かな取り決めや裏事情まで
包み隠さず答えてくれた仲田さん。
 
その実直な人柄が
フランスで成功している秘訣なのだと
スタッフ一同納得しました。

2016年には待望のドメーヌワインがリリースするとか!
まだまだ生産量が少ないため、
皆さんにご案内できるかどうかはわかりませんが、
仲田さんが全て手掛けたワイン、楽しみです♪

▼ルー・デュモンのワインはこちら▼
http://www.enoteca.co.jp/item/list?_producer=489

 
 
 

2016年1月27日水曜日

シャトー・ムートン・ロスチャイルド2013年 初来日のオーナーファミリーがお披露目!

先日、シャトー・ムートン・ロスチャイルドより
オーナー・ファミリーのジュリアン・ド・ボーマルシェ・ド・ロスチャイルドさん
ジュリアンさんの父親で、ムートン・ロスチャイルドをはじめ、
シャトー・クレール・ミロン、ダルマイヤック、アルマヴィーヴァなどを所有する
バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社の副会長、ジャン・ピエール・ド・ボーマルシェさん
ユーグ・ルシャノワーヌ社長が来日。

ワインショップ・エノテカ広尾本店で
シャトー・ムートン・ロスチャイルド2013年お披露目のイベントが行われました。

















ジュリアン・ド・ボーマルシェ・ド・ロスチャイルドさんは実は今回が初来日!
昨年亡くなった、バロネス・フィリピーヌ・ド・ロスチャイルド男爵夫人のご子息で
3人兄弟の末っ子にあたる方です。





















↑ジュリアン・ド・ボーマルシェ・ド・ロスチャイルドさん


ジュリアンさんは、フランスのドローイングの専門家、蒐集家の顔をもち
画商としての活動もしているそうです。
美術に造詣が深いことから、
故バロネス・フィリピーヌ・ド・ロスチャイルド男爵夫人に代わり
シャトー・ムートン・ロスチャイルドのアートラベルの
セレクションを任されていることが決まっています。





















↑李禹煥さんとジュリアン・ド・ボーマルシェ・ド・ロスチャイルドさん

今回、2013年のアートラベルを手掛けたのは
韓国生まれで日本を拠点に活躍するアーティストの李禹煥(リ・ウーファン)さん。
抽象的で強烈な個性を持つ作品は世界中の権威ある賞を受賞。
2000年の上海ビエンナーレでのユネスコ賞をはじめ、
ベニス・ビエンナーレ、パリのジュ・ド・ポーム美術館、
ニューヨークのグッゲンハイム美術館などで作品が展示されています。

李さんは、今回のアートラベルについて

「多くのアーティストの友人がムートンのアートラベルを手がけており、
 自分もいつかと思っていた。 今回ようやくそれが叶って本当に嬉しい。」

とコメント。
20数年前、日本人として初めて1979年のラベルをてがけた堂本尚郎氏は、
李さんの先輩だったそうです。

そして、李さんがアートラベルを手がけたかった理由がもう一つ。
実は、彼は毎日ワインを飲むほどのワインラヴァーなのだそう。

「どの国のワインがお好きですか?」と質問したところ、

「どの国のワインにもそれぞれの良さがあり、様々なワインを楽しんでいる。
 さすがにムートンは滅多に飲めないけれど。(笑)」

との答え。
















2013年のボルドー地方は、
変わりやすく気まぐれな天候が記憶に残るヴィンテージでした。
寒く湿気の多い冬と涼しい春が開花を遅らせ、
雨が少なく暑い夏によって干ばつが続きました。

シャトー・ムートン・ロスチャイルドにおいて、
収穫は過去に例を見ない記録的な速さで行われ、
通常の人員に加え、130名を超える
バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社の社員が参加し、
収穫者用の食堂では、過去最多の695食(!)が振る舞われたそうです。
















↑2013年6月に完成した新しい醸造設備

2004年にシャトー・ブラネール・デュクリュから
フィリップ・ダルーアン氏を醸造責任者に迎えて以降、
品質が安定し、さらに高みに登ったと評されている
シャトー・ムートン・ロスチャイルド。

さらに2013年6月には醸造施設が刷新され、
それまでの2倍という64基のタンクを設置。
これにより、より細かい区画ごとのキュヴェの管理が容易になり
アッサンブラージュの精度が上がったようです。

2013年の収量は過去40年間で最低となりましたが、
過酷なまでの選果と、新しい醸造設備によるきめ細かい醸造によって
素晴らしい品質のワインが生まれました。

ロバート・パーカー氏が、
2013年のシャトー・ムートン・ロスチャイルドに
五大シャトーの中で最も高い評価を与えていることからも
こうした取り組みが実を結んでいると言えます。



















↑シャトー・ムートン・ロスチャイルドの新世代のオーナーファミリー
 フィリップ・ド・セレイス・ド・ロスチャイルドさん
 カミーユ・ド・セレイス・ド・ロスチャイルドさん
 ジュリアン・ド・ボーマルシェ・ド・ロスチャイルドさん
 

ワイン史に大きな足跡を残した偉大な人物、
バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド男爵を祖父に
そして、女傑と呼ばれたバロネス・フィリピーヌ・ド・ロスチャイルド男爵夫人を
母にもつ3人兄弟。
アートとワインを結び付け、偉大なワインを生み出した先人たちの
意思をしっかりと受け継いでいるようです。


2016年1月17日日曜日

2016年 フルートグラス絶滅の危機!?

ちょっと大げさなタイトルですが
今年1月5日に英デキャンター誌で発表された
「Farewell to Champagne flutes in 2016?」
(2016年はフルートのシャンパーニュとおさらば?)
というタイトルの記事の内容がかなり衝撃的です。

↓デキャンター誌の記事はこちら。
http://www.decanter.com/learn/farewell-to-champagne-flutes-in-2016-286743/

記事を執筆したのは、
フリーランスのワインライター、ワイン講師として
イギリスを拠点に活躍しているアンネ・クレビールさん。
数少ない女性のマスター・オブ・ワインの一人でもあります。

記事によると、彼女はこの1年間
「1度もフルートグラスに触れることがなかった。」というのです。
その代わりに、彼女がシャンパーニュやスパークリングワインを飲んだのは
白ワイン用グラスだったとか。
そしてこの白ワイン用グラスこそが「素敵な香りや味わいを楽しませてくれた。」とも。





記事では、ワイングラスの名門、リーデル社のCEOや
ソムリエ、そしてシャンパーニュの生産者にインタビューを重ね、
「フルートグラスが必要でなくなる」可能性について考察しています。
 














こちらは、シャンパーニュの老舗メゾン、ルイ・ロデレールの
醸造責任者、ジャン・バティスト・レカイヨン氏。
記事によると、レカイヨン氏曰く、

「シャンパーニュのポテンシャルを最大限引き出すために、
我々は白ワイン用のグラスをよく使っている。
また、約25年前には、フルートグラスよりも大きな
独自のチューリップグラスを開発した。」

とのこと。















↑ルイ・ロデレールFacebookより

確かに、ロデレールオリジナルのグラス写真を見ると、
丸みを帯びた卵型をしているのがわかります。
こうした大振りのグラスは、クリュッグやヴーヴ・クリコといった
大手メゾンでも次々と採用されているようです。

この動きはシャンパーニュのプロ達の間だけではありません。
最近ではリーデル社から全世界で発売されたグラスシリーズ、
ヴェリタスシリーズが大きな話題を呼びました。
 
 
↑リーデル社が一昨年発売したヴェリタスシリーズ。
 左がシャンパーニュ用。右がロゼシャンパーニュ用。
 
こちらも丸みを帯びた卵型のシャンパーニュグラスで、
従来のフルートグラスとは大きく異なる形状。
ロゼシャンパーニュグラスに至っては、
ブルゴーニュのピノ・ノワール用のグラスと同じ
なんと容量が705㏄もある大きなボウル型です。
 
シャンパーニュの複雑なアロマを開かせるには、この形が最適なのだとか。
 
実際、筆者もリーデル社のセミナーに参加し、
このシャンパーニュグラスとフルートグラスの
味わいの感じ方の違いに驚きました。
丸みを帯びた卵型のグラスの方が、香りはより複雑に、
泡はよりやさしく、きめ細かく感じたのです。
 
 
 
一昔前までは主流だったクープ型のシャンパーニュグラスなんて、
最近全く見かけませんね。
(歴史あるホテルの宴会場で使用されているのを見てびっくりしたくらいです。)
 
記事では、
「フルートグラスの美点は、泡が綺麗に見えることと、こぼれにくいことくらい。」と
ばっさり切り捨てていますが、いかがでしょう?
フルートグラスは、クープ型のシャンパーニュグラスと同じように、
衰退の運命を辿るのでしょうか??
 
2016年、フルートグラスが絶滅するかどうかはわかりませんが、
「シャンパーニュ = フルートグラス」という固定観念を
一度捨ててみるのもいいかもしれません。
 
常識にとらわれずに色々なグラスを試してみることで、
2016年は、グラスとワインの関係に新たな発見があるかも(^^)
 
 

2016年1月6日水曜日

こんな本を待っていた!フランスで一番売れているワインの教科書

新年あけましておめでとうございます!
本年も、ワイン通信ブログをどうぞよろしくお願いいたします。
 
さっそくですが新年最初のブログは、昨年末に続いて本のご紹介です。
 
それがこちら。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ワインは楽しい!LE VINC'EST PAS SORCIER
 / オフェリー・ネマン (著) 、   ヤニス・ヴァルツィコス (イラスト)
    河 清美 (翻訳)
定価 2,500円(本体) 発売元:パイ インターナショナル 
 
 
フランスで大ベストセラーになった
「フランスで一番売れているワインの教科書」という本書。
昨年12月に発売されたばかりの新刊です。
 
ワインジャーナリストでありブロガーである著書のオフェリー・ネマンさんは、
2009年から、ル・モンド紙のウェブ版に
「Miss GlouGlou* (ミス・グルグル)」というペンネームでブログを掲載、
人気を博している方だそうです。
 
本書のとってもユニークなところが、
ソムリエの卵や旅好きの女の子といった
様々な経歴のフランス人が登場し、それぞれ
 
「テイスティングの心得を学ぼう」
「ワイン産地を訪ねる」
「ソムリエ見習いになる」
「ワインをセレクトする」
 
といった章について説明するという体裁をとっていること。
 
しかも、教本なのに
最初の章のタイトルが「ホームパーティーでワインを楽しむ」。
この辺りはさすがフランス人ですね(笑)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
株式会社パイ インターナショナル プレスリリースより
 
 
ただこの章が大変面白く、
グラスの選び方から始まって、
お客様からワインをいただいた時のマナーや、
二日酔い対策、ワインがこぼれてしまった時の染み抜き対策まで、
とっても実用的でくすっと笑える提案が盛りだくさんです。
 
 
こんなことばかり書くと
ワイン初心者向けのライトな実用書かと思われるかもしれませんが、
そんなことはありません。
 
特に「テイスティングの心得を学ぼう」という章では、
「タンニン」の説明に1ページを割き、
また「口中香」についてもわかりやすいイラスト付きでしっかりと説明。
ワインラヴァーの方にとっても新たな発見がありそうです。
 
「最近ワインが好きかも。」
などと言っている知人にプレゼントすれば
ワインラヴァー仲間が増えそう(笑)
どんな方にも楽しく読んでいただけそうな、素敵な教本です。