2015年10月27日火曜日

文学ワイン会「本の音 夜話(ほんのね やわ)」歌人・穂村弘さん登場!

先月、第6回文学ワイン会「本の音 夜話」が
ワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー・エノテカ・ミレで開催され、
当代きっての人気歌人・穂村 弘さんにゲストでお越しいただきました。





















実はあまりお酒が飲めないとのことでしたが、
「でも、今日は飲みます」と穂村さん。
お客様とともに乾杯していただき、会がスタートしました。


まず話に上がったのが、ソムリエが使うテイスティング用語について。
「僕らは短歌を作っているけど、
それ以上にメタファーを使う唯一の職業が
ソムリエだと勝手に思っているんです。
味の表現って基本、例えを使うんですよね、枯草とか革とか血液とか猫とか。
それがすごいなって憧れているんです。」


お酒と短歌。実はとても相性がよいものだそうです。

「岩波現代短歌辞典という本があるんですね。
歴史的に短歌にたくさん使われてきた強い項目は大項目といって、
例えば「桜」は見開き。桜の歌は有名なのがいっぱいありますからね。

それで酒はどうかなって思って見たら、見開きで大項目です。
大項目は辞典の中でもそんなに数は多くないから、
酒に関して言うと、短歌と相性のいいすごく強力な項目と言えます。」



奈良時代の歌に始まり、明治時代や現代の歌、

穂村さん自作の歌まで、
お酒は様々なシーンやシチュエーションで詠まれ続けています。

















お酒の歌って作りやすいんでしょうか?

「酔うとやっぱり行動や言動がヘンになるでしょ。
ヘンになったものをそのままスケッチすると、
もうひとつの世界みたいなものがそこには生まれる。

詩や短歌は、“もうひとつの世界”が書きたいんですよね。
だけどシラフの頭の状態っていうのは、ちゃんとしすぎてる。
それがお酒の作用によって、

みんなちょっとだけずれてアーティスティックになれるんでしょう。」

当日会でご提供したワインは、
ムートン・カデ・レゼルヴ・ソーテルヌ。
甘いもの好きだった穂村さんにちなんでセレクトした、
上品な甘味を持つデザートワインです。
甘いものは定数値を食べた(!)ので、
今はあまり召し上がられていないとのことでしたが、

こちらの甘口ワインは美味しいと言っていただきました。

















ムートン・カデ・レゼルヴ・ソーテルヌ2012 甘口白 税込5,184円



今回、穂村さんをゲストにお迎えするにあたり、
事前にお酒にまつわる短歌を募集したところ、
全部で50首近くの応募をいただきました。

全てをご紹介したいところですが
今回は、当日穂村さんが取り上げられた歌をご紹介します。

▼▼▼

ソムリエのように教えて外国(とつくに)の葡萄畑の土の香りを  ―――鈴木美紀子

カベルネとメルローの違い語るほど時計とスマホ交互に見る君  ―――きくちゃん

収集日ビンを捨てたる手は止まり隣の家の年収ぞ知る  ―――いんこ

ここにはぁぁぁとしてくださいと囁いた溜息収集警察官は  ―――鈴木晴香

私より遺伝子情報確かなるワインラベルを読み解く月夜  ―――West Child

こんこんと眠らせていた口づけがワインとともにささやく夜更け  ―――絢森

氷片を指でつつけばサングリア他人のことなど忘るるが良い  ―――竹内通代

暑い夏寝苦しい夜に白ワイン 空けたボトルに翌日驚愕  ―――水原ゆり

二日酔いもう飲まないと決めたのに 気づけば向かういつものお店  ―――長崎一郎

おいしいよそっちはどう?とグラス替えふたり行き着く琥珀の港 ―――シャトー・ラ・ポンプ

枇杷山椒夕立のあとのアスファルト梅干しママカリ蓮根でどう  ―――Y・H

爽快で冷たい泡が流れ込み絡まりほぐれてまた生き返る  ―――333


みなさんとても上手だと、穂村さんも絶賛!

会場は大いに盛り上がり、
穂村さん独自の世界観や、ユニークなエピソードもたくさんお話いただき、
クスクス笑いの絶えない楽しい時間となりました。

短歌を詠むこともワインを飲むことも、
もうひとつの異なる世界の扉を開いてくれるもの。
穂村さんのお話を聴いていると、短歌の自由さ、面白さが実感でき、
無性に歌を詠みたくなってきました。

皆さんもたまにはワインを飲みながら、
自由な気持ちで一首、詠んでみてはいかがでしょうか。





















『ぼくの短歌ノート』(講談社)
定価1500円+税

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