先日、第10回文学ワイン会「本の音 夜話」が
ナビゲーターの山内宏泰さんより、お酒がお好きだと紹介された西川美和さん。
まずはアンティノリが造るシャルドネ100%のワイン、ブラミートを片手に、
西川さんによる乾杯のご発声で会がスタートしました。
西川さんの作品では、お酒を飲む場面が時々見られます。
この秋ご自身により映画化される『永い言い訳』では、
西川さんによる乾杯のご発声で会がスタートしました。
西川さんの作品では、お酒を飲む場面が時々見られます。
この秋ご自身により映画化される『永い言い訳』では、
妻を事故で亡くした幸夫が、同じ事故で亡くなった妻の親友の遺族と
麻布十番のビストロで食事をするシーンがあります。そのテーブルにちらりと映っているのがブルゴーニュワイン。
「主人公の衣笠幸夫(きぬがささちお)はすごい売れっ子小説家という設定です。
お酒などの文化にも造詣が深いことになっているので、そういう人が飲むのはこういうもので、行きつけはこういう店であろうと。
私は詳しくないので、撮影させていただいたお店のソムリエさん方に
相談しながら決めました。」
ワンシーンのワインひとつについても、
そこに出てくるのがどういうワインであるべきなのかが詰められており、そうした細部は映画作りにとって非常に大事なのだそうです。
そして
「トラック運転手のお父さんが1000円ぐらいのチリワインをコンビニで買ってくるのですが、
幸夫はそれを十分美味しいと感じます。
もともと1万円前後のワインを平気で開けるような設定の主人公。
それこそワインにも一家言あるような人物なのですが、妻の親友家族の生活に出入りするようになり、子どもたちと出会ったりするなかで、
幸夫くんがワイン好きだからと、相手のお父さんが手さぐりで買ってきたワインを
意外と旨いものだな、と主人公が感じるのです。」
幸夫自身の状況や周囲との関係の変化が、言葉ではなく、
どんなワインを飲むかということで表現されています。
どんなワインを飲むかということで表現されています。
主人公の幸夫は、人間の弱い部分や欠点を寄せ集めたような人物ですが、
西川さんがこれまで生み出したキャラクターの中で一番自分自身に近いとのこと。
あと、物を書く人間独特の虚実がない混ぜになって、
バランスが悪くなっている部分なんかは自分の職業を反映したところがあります。
幸夫もチヤホヤされている小説家という設定ですが、
幸夫もチヤホヤされている小説家という設定ですが、
中身を開けば子どもっぽいパーソナリティー。
そういう部分は本当に自分に似せて書いています。」
西川監督による、小説と映画の表現方法の違いについてのお話は、
改めて、映画を撮ることの大変さと、その表現の深さに気づかされることがたくさん。そういう部分は本当に自分に似せて書いています。」
西川監督による、小説と映画の表現方法の違いについてのお話は、
ワンシーンごとに、様々な意味や意図が凝縮されていることが実感できるお話でした。
とくにあるお客様からの質問、
へのお答えが心に残りました。
お前もだろ? な?と言われました。
是枝さんの作品を観るとそんな印象はないですが、
実は批評性や批判精神があるんですよね。
私は、今は怒りとかそういうものではないんですが、
今回も書いたような誰にも言えない苦々しい別れとか、
世間の陽のあたらないところの感情など、
大きな声で言えないことを書いていきたい、と思っています。」
お話をしていただきながら、「美味しい!」と、たびたびグラスを傾けられていた西川さん。
西川さんと共にワインを楽しみながら、
小説と映画という創作の世界や、
映画作りへの深い想いを窺うことができた、
大変充実した会となりました!