先月、第5回文学ワイン会「本の音 夜話」が
ワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー・エノテカ・ミレで開催され、
ご自身の小説が実はほぼ、飲み会を描いていることに
改めて気付いたとか。
デビュー作『きょうのできごと』に始まり最新作『パノララ』まで、
どの小説にも人が集まり、食べて飲んでいるシーンが登場します。
「飲み会など複数の人がいて、そこにあるいろんな人間関係を書くのが好きなんですよね。
一対一の深い抜き差しならない関係よりは、
複数の中によく知らない人がいたりとか、初めて話す人もいたり、
そんな濃淡のある人間関係の面白さみたいものを書きたい、
という気持ちがずっとあります」
柴崎さんの最新長編小説は、『パノララ』。
タイトルは、パノラマ写真に由来します。
作中には、ワープ(瞬間移動)や同じ日を2回繰り返すといった、
少しだけズレた世界に飛ぶ超常現象が登場します。
『パノララ』/柴崎友香
講談社 定価1800円+税
「謎のことってけっこう日常生活の中にあるけど、
それを気にしていると進めないから、人は世界を整理して捉えていると思うんです。
でも、世界はもっと複雑で可変的なもの。
でも、世界はもっと複雑で可変的なもの。
例えば同じ場所で同じ体験をしても、
人によって覚えていることや見ているものは違う。
『パノララ』は、それぞれが違う世界の捉え方をして生きていて、
そこでやっぱり軋轢が起こってくる、という人間関係を描いてみたかったんです」
この会で、柴崎さんに合わせて供された赤ワインは、
スペインのワイナリー、トーレスが造るセレステ・クリアンサ。
ワイナリーから見える美しい星空が描かれたラベルが印象的なワインです。
このワインは、柴崎さんのご著書『星のしるし』『星よりひそかに』など、
タイトルに“星”がよく付けられていることや、
『きょうのできごと、十年後』の舞台がスペインバルであることからセレクトされました。
「星は好きで、星柄の服とかも多いです。
そこはやっぱり(柄ものが好きな)大阪人なもので。笑」
ご自身がおっしゃるとおり、大阪ご出身の方らしいサービス精神豊かなお話は大変面白く、
会場から大きな笑いを呼んでいました。
ご自身の創作について詳しくお話いただいたほか、
『パノララ』の一節も朗読していただき、
終始、柔らかな柴崎さんのお人柄に包まれたトークイベントとなりました♪
☆次回の「本の音 夜話(ほんのね やわ)」は、2015年9月15日(火)に開催いたします。
ゲストは、歌人の穂村弘さんです。どうぞお楽しみに!