少し前となりますが、第4回文学ワイン会「本の音 夜話」が
ワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー エノテカ・ミレで行われ、
小説家の原田マハさんが登場されました。
原田さんは学生時代に美術史を学び、その後、
美術コンサルタントやキュレーター(学芸員)として活躍。
アートの世界に長く身を置かれた経験から、
時代もジャンルも様々なアートを主題とする作品を執筆されています。
実は2014年に、ボルドーワインの振興に貢献された方々に贈られる名誉号
“メドック-グラーヴ&ソーテルヌ-バルサック・ポンタン・コマンドリー”を叙任された原田さん。
冒頭で
「ワインはお好きですか?」
と聞かれ、
「すごく飲めそうと言われますが、全くの下戸です(笑)」
と衝撃的な答えが返ってきて、一同びっくり!
美味しいワインをグラス1杯、じっくり時間をかけて飲むのが
原田さん流のワインの楽しみ方だそうです。
お父様が美術全集のセールスマンだったという原田さん。
自宅には全集の在庫が積まれていたため、3歳の頃からアートに親しんでいたそうで
当時はダ・ヴィンチの絵を見て「この人は絵がうまい!」と既に思っていたとか。
原田さんの美術への眼差しは、この恵まれた背景から生まれたようです。
10歳の頃にはピカソの『鳥かご』を見て「ヘタ過ぎ!」と雷に打たれたような衝撃を受け、
自分でも描けると思って以来、原田さんにとってピカソは永遠のライバルになったそうです。
今度は20歳の誕生日に青の時代の作品を見て「ピカソって天才だ!」と
再び雷に打たれた原田さん。
その後「ヘタだけど心にひっかかる」と思って興味をもったのが
山本周五郎賞を受賞した『楽園のカンヴァス』で取り上げたアンリ・ルソーとのこと。
原田さんはこうしてご自身の直観と運に導かれながら、執筆を重ねてきました。
最新作の『モダン』では、
2000年に森美術館の交流プログラムで
MoMA(ニューヨーク近代美術館)に派遣された際の経験をもとに
この一大美術館で起きる出来事を描いた美術小説短編集です。
『モダン』 / 原田マハ
文藝春秋 本体価格1,300円+税
「アートも小説もワインも、なくても生きていけるけど、あると人生がより豊かになる。」
と原田さん。
「ワインとアートの共通点は何ですか?」
との質問に、
「その時の状況で味わいや見え方が変化するところ。
寂しい気持ちの時に飲むワインは、ほろ苦く。
浮かれた気分の時に飲むワインは、華やかに。
これは小説を読むときも同じ。どちらも生きたものなんです。」
とのお答えをいただきました。
その時々の飲み手や読み手の心情で感じ方が変化するのが、
ワインと小説のおもしろいところですね。
ストーリーテラーである原田さんらしく、
小説を書くきっかけとなったご自身の体験談もとてもドラマティックで、
会場はすっかりそのお話に引き込まれていました。
美術と人々をつなげる「窓」となるような小説を書きたいと言う原田さん。
「これからもたくさんの窓をつくって欲しい!」と
きっと会場の誰もが心の中で願ったであろう、とっても楽しい会でした。
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