2016年6月4日土曜日

文学ワイン会「本の音 夜話(ほんのね やわ)」小説家・島本理生さん登場!

先日、第8回文学ワイン会「本の音 夜話」が
ワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー・エノテカ・ミレで開催され、
小説家の島本理生さんにゲストでお越しいただきました!




















ナビゲーターの山内宏泰さんから、
文学ワイン会にとてもふさわしいゲストとして紹介された島本理生さん。
ワインや日本酒が大好きでいらっしゃるそうです。

ご自身がお酒好きなことから、作品の中にもお酒がかなり登場します。

  「お酒を飲む場面は好きなので、毎回大体出てくるんですが、
  ワインを出すか、日本酒を出すかは作品によって結構分かれるところ。
  やはり同じお酒でもだいぶ作品の印象が変わるなというのを書いていて実感します。

  私の小説は、これから男女で何か起きるときってシャンパンかワインなんですよね。
  そこで日本酒を一升瓶で飲んでいたらちょっと違うかなと。笑
  やっぱり恋愛ってワインとすごく相性がいいなあと思うんです。」






















ご著書『あられもない祈り』ではシャンパンが、
『Red』では赤ワインが登場します。
小説に登場する料理やワインは登場人物の関係性が反映されているとのこと。

  「『Red』では私の趣味と全精力をかけて、
  小説の中にお酒とご飯の描写をふんだんに盛り込みました。
  途中から趣味のように料理の描写が続くんですけど。笑

  かなり気に入っている場面が後半にあって、
  ちょっと古いフレンチのお店で仔羊の塩焼きと一緒に
  赤ワインを飲む場面なんですけど、料理は牛でも豚でもなく、仔羊。
 
  真っ直ぐではないクセのあるふたりの関係性や、
  相手の男の人のイメージなどを考えながら選んでいます。」

小説に出てくるお酒や料理は、
島本さんの嗜好のみならず、
登場人物の性格や背景までをも考察して描かれたもの。
お酒や料理が出てきた理由を考えながら小説を読むのも楽しそうです。


この会でサービスしたワインは、
最新刊『イノセント』と『Red』、それぞれの小説のイメージに合う白と赤。
島本さんからのリクエストにお応えしたもので、
『イノセント』は、「ライチや花の香りがするような、辛口だけど華やかさのある白」を、
『Red』は、「飲んだときに煙る感じと甘味が両方あって、
時間が経つにつれて味が複雑に変化する、重めの赤ワインを」と
具体的なイメージをいただきました。

当日お出ししたのが下記のワインです。






















◆小説『イノセント』のイメージに合わせて…
ゲヴェルツトラミネール / エナーテ2015 白 税込2,808円






















◆小説『Red』のイメージに合わせて…
プリヴァーダ / ボデガ・ノートン2013 赤 税抜3,240円

最新刊『イノセント』は、島本さんの作品の中で、いちばん幸福な結末を迎えます。

 「障害がある恋が好きで、無意識にそういうものを書いているから、
  つい最近まで主人公と相手の男性がまともにつきあった小説すら
  書いていないことに気づきました。笑
  『イノセント』は、今まで本当に初めてぐらいのハッピーエンド。
  ここまではっきりちゃんと成就するって珍しいと思います。」

  




















『イノセント』(集英社)
定価1600円+税

最新長編小説。
一人の女性と二人の男性の出逢いが奏でる、
葛藤と悔恨、愛と救済をめぐる物語。


最後の質問コーナーでは、お客様から山のような質問が!
とくに印象に残ったのが、

 「作家とは何でしょうか?」

という質問へのお答え。

 「作家の役割は、私個人は決めつけないことだと思っています。
  同調圧力とかそういった大多数の力だけじゃない道を示すこと。
  できる限り決めつけないことで人を楽にするというか、
  何とも言えない感情を小説の中だけでは向き合えたりする、そういうものかなと。

  人が良いと言っていることも悪いと言っていることもどんどん分解して解体していく。
  人を自由にするのが作家の仕事かな、と思っています。」


















この会のため、ワインやお酒が出てくる小説やエッセイを
たくさん持ってこられた島本さん。
岡本太郎『芸術と青春』、江國香織『きらきらひかる』、
開高健『小説家のメニュー』、そして千早茜『男ともだち』。
それぞれについて解説や感想をお話いただきながら、
ワインが登場するシーンを朗読いただいたのは、なんとも贅沢なひとときでした!

ワインの魅力を文学と重ねた島本さんのお話は、まさにこの会ならでは。
率直に語られるエピソードの数々に、会場は何度も笑いの渦に包まれました。
ワインを飲みながら、島本さんの小説をまた読み返してみよう、
お薦めされた小説を読んでみよう、と思われたお客様も多いはず。
ワインと文学が絡み合う、刺激的な一夜となりました。

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